成果刊行物(単行本)
誰のための、何のための「国境」なのか? 露大統領の国後島訪問、尖閣諸島問題、竹島問題…事件が起こる度に騒がれる「領土問題」。だが、境界地域の人々の「日常」や「生活」が注目されることはな い。実務者、企業家、政治家、郷土史家、研究者、ジャーナリストなど50名の多彩な執筆陣が、「領土問題」、「国境意識」の議論のあり方に再考を促す画期 的特集。 |
- 編著
- 岩下明裕
- 発行日・出版社
- 2012年3月30日発行 / 藤原書店、定価 3300円+税
目次
- I 総論
- 国境から世界を包囲する 岩下明裕
「境界自治体」とは何か〔その機能から考える〕 古川浩司
境界=「見えない壁」を見つめて〔根室・対馬・与那国の比較〕 本間浩昭
島嶼と境界〔小笠原諸島から考える〕 佐藤由紀
世界の島嶼国境〔バルト海・マレー半島先端部・エーゲ海・カリブ海〕 長嶋俊介
日本島嶼学会の歩みと国境離島への考え方 鈴木勇次 - コラム
- 国境フォーラム〔「境界自治体」同士の交流〕 田村慶子
「知られざる国境DVD」シリーズ〔ボーダーに生きる人々の日常〕 竹内陽一
GCOE「境界研究」の博物館展示〔「境界問題」の体感の場として〕 木山克彦 - II 千島と根室
- 「北方領土」とは何か〔冷戦後の失われた20年〕 黒岩幸子
「占守島の戦い」再考〔「8月15日史観」を問い直す〕 井澗裕
密漁の海で〔レポ船・特攻船・ロシア密漁船と根室経済〕 本田良一
「国境」と呼べない街・根室〔その苦悩と今後の展望〕 長谷川俊輔
占領下・勇留島からの決死の脱出 鈴木寛和 - コラム
- ビザなし交流〔経済交流を阻む法的厳格主義〕 伊藤一哉
領土問題と地元・根室の声〔「ビザなし特区」による経済交流〕 遠藤輝宣
国後と根室をつなぐ海底電線〔父がソ連人と共生した二年間〕 久保浩昭
エトピリカ文庫 松崎誉 - III 樺太と稚内
- 向こう岸の雲の下〔日露戦争の終わりと樺太のはじまり〕 天野尚樹
「中継点」―「端」―「中継点」〔稚内とサハリンとの交流〕 中川善博
国境標石物語 相原秀起 - コラム
- 無いものについて〔樺太小考〕 工藤信彦
サハリンとの交流と稚内の発展 佐藤秀志
サハリンとの経済交流の深まり 藤田幸洋 - IV 朝鮮半島と北部九州・対馬
- 朝鮮を囲む四つのボーダー〔華夷秩序と西洋型国際秩序〕 松原孝俊
福岡・釜山超広域経済圏構想 加峯隆義
日韓観光交流に生きる国境の島・対馬 新井直樹
対馬市の国境交流構想 財部能成
韓国から最も近い日本・対馬 金京一 - コラム
- 国際交流としての対馬の観光事業 比田勝亨
防衛の最前線基地としての対馬 武末聖子
国境離島としての五島 久保実 - V 台湾と八重山
- 八重山台湾交流史 松田良孝
「与那国・自立へのビジョン」断想〔「国境地域政策」の欠落〕 上妻毅
南西諸島における自衛隊配備問題 佐道明広
与那国町の将来展望〔人口増加という課題〕 外間守吉
与那国・中国・台湾の三角貿易構想〔「もう一つの外交」としての国境地域政策〕 吉川博也
竹富町における海洋政策〔海洋保全とまちづくり〕 小濵啓由 - VI 大東島
- 大東島の歴史に連なる兄弟たち 山上博信
ボロジノからボロジノへ〔南・北大東島発見史〕 木村崇 - コラム
- 南大東島観光大使として 吉澤直美
- VII 小笠原
- ディアスポラの島々と日本の「戦後」〔小笠原・硫黄島の歴史的現在を考える〕 石原俊
越境してきた小笠原ことば〔その複雑で豊かな言語史〕 ダニエル・ロング
「南洋踊り」が物語る歴史〔小笠原の越境性と多文化性〕 小西潤子
国境と小笠原〔南北800キロ・東西1600キロの小笠原村〕 渋谷正昭
生態学からみた小笠原 可知直毅
潮目のまなざし〔ヘンドリック・セーボレー=瀬堀信一さんの回想〕 南谷奉良
チリ地震津波の体験〔イーデス・ワシントン=大平京子さんの回想〕 今村圭介 - コラム
- 小笠原諸島の地理と歴史 延島冬生
医師の目からみた小笠原〔国境としての小笠原離島医療の特徴〕 越村勲
「ちっぽけな島
国」。日本についてよく聞かれるステレオタイプだ。「ちっぽけな」は間違い。6852の島、その領海と排他的経済水域の広がりは447万平方キロ、これは
世界で六番目に大きい。ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾のみならず、米国、フィリピンとも国境を接する。これが海洋国家としての日本の事実である。だ
が、そこに暮らす住人たちの多くは、国境大国たる日本の実像を自覚しえない。過去から現在へと連なる日本の来歴が、周辺地域との関わりのなかで生まれてき
たことさえ理解しない。本書では、その「存在の軽さ」に呪縛されつづける、国家の現実を、境界の磁場から一つ一つ解体していこう。。。 (編者より) 本書は、第24回地方出版文化功労賞を受賞いたしました。授賞式の模様はこちら。 |
- 編著
- 岩下明裕(スラブ研究センター)
- 発行日・出版社
- 2009年12月18日刊行 / 北海道大学出版会、定価1680円
目次
- 国境の詩(工藤信彦)
- 序 章 「辺境」からの問いかけ(岩下明裕)
- 第一部 海洋国家日本:「呪縛」との闘い
- 第一章 海に広がる国境の島々(山田吉彦)
第二章 離島と国境:行政概史と経営戦略(長嶋俊介)
第三章 北辺国境地帯「北方領土」(黒岩幸子)
第四章 北方領土問題解決試案――北欧のオーランド・モデルから(原貴美恵)
エッセイ 国境幻想:樺太で生まれ育ったものとしての(工藤信彦)
北方領土問題の打開へ : カギ握る戦略的「四島交流」(須藤真哉) - 第二部 国境イニシアチヴ:「辺境」からのまなざし
- 第五章 国境島嶼を考える:小笠原シンポジウムから(田村慶子)
第六章 国境地域の挑戦:自治体主導の「国際政策」にむけて(古川浩司)
第七章 「屋敷まわり」としての小笠原 (山上博信)
第八章 国境島嶼・小笠原の位置取りと国境意識:母島アンケート調査から(佐藤由紀)
第九章 オキナワ・パブリック・ディプロマシー(金成浩) - あとがき(岩下明裕)