サーミの伝統的居住地サップミ(Sapmi)は、ノルウェー、ス ウェーデン、フィンランド、ロシアと4ヵ国に跨ります。現在、これらの国々に約75,000人のサーミが暮らしていると されています。本展示では、フィンランドにおけるサーミの伝統的生活と文化を紹介します。また、現代のサーミの人々が、自らの言語や伝統文化をどのように 維持・継承しようとしているのか、その取り組みについてもご紹介します。サーミは単一の集団ではなく、生活圏に 応じて、言語や文化・伝統が異なりますが、ひとつの先住民族としてEUに公式に認められています。本 展示では、フィンランド北部に暮らす3つのサーミの集団、北サーミ、イナリ・サーミ、スコルト・サーミに 焦点をあてます。サーミは、何百年にも渡って自然と共生し、冷涼降雪の環境に適応し、漁撈や狩猟、そして特徴的なトナカイ飼育を生業としてきました。現 在、多くのサーミは、故郷であるサップミを去り、フィンランド 各地で暮らしていますが、伝統文化の様々な要素は、彼らの生活に息づいています。
|
サーミの民族衣装(エノンテキオ・サーミ) 豊
か装飾性で知られる伝統衣装は、アイデンティティの重要なシンボルです。集団によって衣装の色・装飾・素材が異なります。また、装飾は、着用者の社会的状
況も表しています。かつては日常着として着用されていましたが、時代とともに晴れ着やトナカイ飼育時の仕事着として 変化しています。 |
|
イナリ・サーミ(左)とスコルト・サーミ(右) イナリ・サーミはイナリ湖周辺で漁業や狩猟、小規模 なトナカイ飼育を生業としています。少数派のイナリ・サーミは常に適
応・同化を強いられており、復興活動にも関わらず、現世代とともに消滅する危機が残っています。スコルト・サーミはかつてコラ半島に暮らしていましたが、
大戦後にフィンランドがソ連へ土地譲渡したことによって故郷を失い、伝統的居住地を国境により分断されています。 |
|
サーミの太鼓
伝
統的なサーミの村ではシャーマンが共同体の精神的 指導者でした。シャーマンは太鼓をバチで叩きリズムを作り出すことで精
神世界と対話することができました。太鼓はシャーマン自ら製作することが多く、所有者の世界観が図像に描かれます。中央の円形や四角形は太陽神の象徴で、
四方に延びる線は太陽の力を示すと解釈されています。周りには、神、人、動物が対照的に取り囲んでいます。17-18世紀には輸出品として人気が高く散逸
しており、ヨーロッパではわずか71張が各地の博物館に所蔵されているのみです。 |