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大学院ニュース 2012年12月17日
麻田雅文さんの『中東鉄道経営史:ロシアと「満州」1896-1935』出版される
麻田雅文さんは、スラブ社会文化論専修に修士課程から在籍し、2010年にご著書と同名の博士論文を北海道大学文学部に提出しました。 その博士論文は、2011年8月に第10回アジア・太平洋研究賞(井植記念賞)を受賞しています。 第10回では、上野雅由樹さん(当時、東京大学)とともに2名の受賞でした。そして今年11月に、本文、註、史料を合わせると479頁、 参考文献が26頁にわたる大著が、名古屋大学出版会より出版されました。目次は、書籍のページをご覧ください。 以下は、その麻田さんからの喜びの声と今後の抱負です。
修士、博士課程とお世話になったスラブ研究センターでの研究を、このたび一冊の本にまとめることができて、深い感慨を覚えます。 拙著を簡潔にまとめるなら、ロシア人たちが20世紀前半の「満洲」(中国東北)で中東鉄道の経営を通じて何をしていたかの地域史であり、 さらに鉄道の敷設で興隆した地域経済の変容を扱った経済史でもあり、露中日米仏など各国も鉄道を手に入れようと野心を抱いていたことで 繰り広げられていた国際関係史の研究でもある、という三つの側面があります。
今でこそ「満洲」は遠くになりにけり、ですが、1945年の敗戦までは日本の「生命線」と呼ばれた最重要地域でした。 その影響は遠く北海道にも響いており、書庫をのぞけば、当時の北海道帝国大学がいかに熱心に「満洲」について書籍を収集していたかが分かります。 また日本海を挟んで向かい合うこの両地域は、対ロシア(ソ連)の最前線として日本の国防の要であったと共に、 ロシア文化と日本人が触れ合う磁場としても共通性がありました。 中東鉄道に関する初の総合的な研究が北海道大学の一学徒だった自分の手で書かれたのも、一抹の必然性があったのかもしれません。 今後もロシアという隣国を東北アジアの歴史に接合すべく、新たなテーマで挑戦を続けていく所存です。