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【大学院共通授業科目】 (集中講義)
「ユーラシアにおける戦争の記憶と表象」
日時:2013年2月5日〜2月7日
場所:スラブ研究センター4階小会議室(401) *7日は同じ階の大会議室(403号)を使用成績は主としてレポートの評価による。授業への出席および積極的な発言も成績に加味する。
レポートの文字数は2000字以上。2月15日(金)までにメールで提出すること。
提出先: 越野(E-mail : gkoshino<at>slav.hokudai.ac.jp 、<at>は@ に変換してください)
2月5日
9:00〜12:00
越野剛(北大)
授業全体のガイダンス
戦争と「国民」の表象―ナポレオンのロシア遠征
要旨 参考文献戦争という非常時は、貴族と農民、男性と女性、ロシア人と非ロシア 人などの社会的断層が絵画や文学の中で可視 化される契機となった。積極的にイメージされるもの、隠ぺいされるもの、歪んで伝えられるもの、戦時中の「国民」の様々な表象のありようを比較検討する。 ・トルストイ『戦争と平和』 (新潮文庫、岩波文庫などで読めます)
・両角良彦『一八一二年の雪―モスクワからの逃走』朝日選書、1993年
・Stephen M. Norris, A war of images : Russian popular prints, wartime culture, and national identity 1812-1945 (Northern Illinois University Press, 2006)
・Molly W. Wesling, Napoleon in Russian Cultural Mythology (Peter Lang Publishing, 2001)
・越野剛「ナポレオンのロシア遠征とナロード(民衆)の英 雄イメージ」『英雄の条件―近現代ヨーロッパにおける軍事英雄観の展開』科学研究費補助金研究成 果報告書(研究代表者:杉本淑彦)、2009年、73-100頁13:30〜16:30
前田しほ(北大)ソ連の戦争表象における女性イメージ 要旨 参考文献ソ連では近代的国民意識の形成に第二次大戦をめぐるパブリック・メモリーが大きな役割を果たした。他方、文学や映画の世 界では、戦争の外傷的経験を語ることで、 戦争を脱神話化しようとする伝統も根強い。本講義では、戦勝記念碑において高度に組織化されたジェンダー秩序と、戦争の神話化に抵抗する女性の「声」を検 証する。 ・若桑みどり『戦争とジェンダー』戦争がつくる女性像:第二次世界大戦下の日本女性動員の視覚的プロパガンダ (ちくま学芸文庫)、2000年。
・ケネス・E・フット『記念碑の語るアメリカ:暴力と追悼の風景』名古屋大学出版会、2002年。
・ベネディクト・アンダーソン『定本 創造の共同体:ナショナリズムの期限と流行』、書籍工房葉山、2007年。
・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』群像社、2008年。
16: 40〜18:00 討論
2月6日 *この日の午後は13:00開始です
9:00〜12:00
平山陽洋(北大)
戦争をめぐる official memory と vernacular memory: ベトナムにおける歴史叙述と文学作品を題材に
要旨 参考文献本講義では、ベトナム戦争をめぐる集合的記憶が、ベトナム国内でどのように構築されてきたかを、歴史叙述や文学作品を題 材に検証する。主として論じられるのは、以下の2つのトピックである。第1に、戦争のさなかの1960年代から70年代にかけて、戦争をめぐる official memory(公式化された記憶)が「上から」形成された文化史。そして第2に、戦争終結後の1980年代以降に、official memory への違和感や拒絶感が広まり、vernacular memory(習俗化された記憶)が「下から」徐々に形成された様態、である。 ・ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』書籍工房葉山、2007年、に収録の「第11章 記憶と忘却」。
※この第11章は『増補 想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』NTT出版、1997年、にも収録されているので、そちらを参照してもよい。
・生井英考『負けた戦争の記憶:歴史のなかのヴェトナム戦争』三省堂、2000年、に収録の「第5章 動く記憶」。
・レ・ティ・ニャム・トゥエット(片山須美子編訳)『ベトナム女性史:フランス植民地時代からベトナム戦争まで』(アジア現代女性史8)明石書店、 2010年。
・アィン・ドゥック(冨田健次訳)『ホンダット洞窟の夜明け:ベトナム戦争を支えた女性達』(アジア文化叢書4)穂高書店、1992年。
・バオ・ニン(井川一久訳)「戦争の悲しみ」[『暗夜 残雪/戦争の悲しみ』(池澤夏樹編集世界文学全集第T集第6巻)河出書房新社、2008年、に収録]。
・グエン・チー・フアン(加藤栄訳)『ツバメ飛ぶ』てらいんく、2002年。
・平山陽洋「戦場のリアリティ?:バオ・ニン『戦争の悲しみ』をめぐって」 『未来』第420号、2001年9月、9-15頁。
・平山陽洋「第三世界表象論:ベトナム戦争とメディア」、伊藤守編『文化の実 践、文化の研究』せりか書房、2004年、184-194頁。
・平山陽洋「戦争を再記憶化する作法:ある戦中作家の戦後の軌跡」、今井昭 夫、岩崎稔編『記憶の地層を掘る:アジアの植民地支配と戦争の語り方』御茶の水書房、2010年、83-111頁。13:00〜16:00
望月哲男(北大)日露戦争と非暴力論:トルストイとガンディー 要旨 参考文献日露戦争に際してトルストイが発したメッセージ『考え直せ』は、20世紀の非暴力論にとって大きな意味を持った。それは まず、『イワンの馬鹿』のような寓話や『神の王国は汝らの内にあり』のような宣言文、また反戦的ドゥホボール教徒の大量移住のような社会運動の形で展開さ れてきたトルストイの非暴力主義が、国際戦争を背景に広く世界の世論に働きかける機会となった。それが幸徳秋水や與謝野晶子など日本の言論界にもたらした 反響はよく知られている。この講義では、日露戦争そのものと、戦争に対するトルストイの批判が、当時南アフリカでインド人労働者の解放運動を行っていた ガーンディーに与えた影響を追ってみたい。そして、これを一つの契機として、ガーンディーがトルストイ的な非暴力主義を、植民地解放運動の行動原理へと進 化させていく様子を振り返ってみよう。 ・レフ・トルストイ(中村白葉訳)『イワンの馬鹿とその二人の兄弟』『トルストイ全集』13巻(河出書房新 社、1973)
・レフ・トルストイ(中村融訳)『神の王国は汝らの内にあり』『トルストイ全集』15巻(河出書房新社、1974)
・レフ・トルストイ他著(平民社訳/国書刊行会編集部現代語訳)『現代文 トルストイの日露戦争論』国書刊行会、2011。
・岩崎紀美子『與謝野晶子とトルストイ』文芸社、2012。
・法橋和彦『古典として読む『イワンの馬鹿』』未知谷、2012。
・M.K. ガーンディー(田中敏雄訳)『真の独立への道(ヒンド・スワラージ)』岩波文庫。
・The Collected Works of Mahatma Gandhi:Vol. 4, Vol. 5, Vol. 10, Vol. 43:
・Leo Tolstoy, A Letter to Hindu: The Subjection of India ? Its Cause and Cure:
・Patricia Holmes, “Leo Tolstoi as a Theorist of Non Violent Social Revolution and His Relationship with Mohandas Gandhi” (PhD diss., Univ. of Missouri-Columbia, 1978).
・Martin Green, The Origins of Nonviolence: Tolstoy and Gandhi in Their Historical Settings (The Pennsylvania State University Press, 1990)
16:10〜16:50 討論
2月7日 *この日だけ場所が同じ階の403号室(大会議室)に変わります
9:00〜12:00
向後恵里子(早大)
近代日本における戦争の視覚イメージ 要旨 参考文献本講義では、近代日本において戦争が人々の間でどのように可視化され、受容されていたのかを検討する。 前半は幕末から太平洋戦争期までの様々なメディアにおける戦争の視覚イメージを概観し、 後半はとくに「戦死」のイメージをとりあげ、戦場での死がいかに“甘美”なものとして表象されたかを検証する。 ・ ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体:ナショナリズムの起源と流行』書籍工房葉山、2007年。
・ ポール・ヴィリリオ著、石井直志・千葉文夫訳『戦争と映画 知覚の兵站術』 〈平凡社ライブラリー295〉平凡社、1999年(ユー・ピー・ユー、1988年)。
・ サム・キーン著、佐藤卓己・佐藤八寿子訳『敵の顔 憎悪と戦争の心理学』 〈パルマケイア叢書2〉柏書房、1994年。
・ 丹尾安典・河田明久『イメージの中の戦争 日清・日露から冷戦まで』〈岩波近代日本の美術1〉岩波書店、1996年。
・ 針生一郎、椹木野衣、蔵屋美香、河田明久、平瀬礼太、大谷省吾編『戦争と美術』国書刊行会、2007年。
・ E.ホブズボウム、T.レンジャー編、前川啓治・梶原景昭他訳『創られた伝統』〈文化人類学叢書〉紀伊國屋書店、1992年。
・ ジョージ・L.モッセ 著、宮武実知子訳『英霊 : 創られた世界大戦の記憶』 〈パルマケイア叢書15〉柏書房、2002年。
13:30〜16:30
中野徹(近畿大)切り取られる自他像
─中国の革命歴史故事における“日本鬼子”像 要旨 参考文献戦争をめぐる表象は、それを切り取ろうとする立ち位置によりまったく異なるものとなる。中国では、“抗日戦争”と呼ばれ る日中戦争を題材とする“故事”[物語]は、さまざまな媒体に改編されて人々に享受されてきた。改編の過程で、“日本鬼子(リーベングイズ)”[日本兵お よび日本人の蔑称]像や中国の“英雄”像はどのように変容し、再生産されてきたかを、小説、連環画、映画、テレビドラマから読み解きたい。 ・牧陽一・松浦恆雄・川田進『中国のプロパガンダ芸術─毛様式に見る革命の記憶』(岩波書店、2000)
・武田雅哉『鬼子たちの肖像─中国が描いた日本人』(中公文庫、2005)
・中野徹「消えた「少年」、足された「大人」、足された「大人」─連環画『鉄道遊撃隊』に関する覚書」(『饕餮』第18号、中国人文学会、2010年9 月、56?80頁)
・好並晶「鏡合わせの中国人と日本人─中国映画(スクリーン)に投影される日中両国」(弓削俊洋編著『中国・台湾における日本人像─映画・教科書・翻訳が 伝える日本』東方書店、2011、2?32頁)
16:40〜18:00 討論
問合わせ:越野(E-mail : gkoshino<at>slav.hokudai.ac.jp 、<at>は@ に変換してください)