スラブ研究センターニュース 季刊 2007年 冬号 No.108 index
過去数年間のロシアは、石油価格の高騰とプーチン下での政治の安定により、奇跡的な復 調をとげ、今後中国と並んで21 世紀世界の台風の目となることは間違いありません。しかし 一方、ソ連の崩壊後旧ソ連研究者のロシア離れが進み、ウクライナ研究や中央ユーラシア研 究の活況と比べれば、ロシア研究は停滞している感を否めません。センター自身がスラブ・ ユーラシア研究のロシア離れ傾向を生み出した張本人の一人でしたが、このことが必ずしも ロシア研究の将来を害したとは思いません。かつてのロシア研究者が、モスクワ経由の情報 に頼り、概してロシア語しか読めなかったのと違って、スラブ・ユーラシア学の爆発的な発 展のおかげで、こんにち我々はより広い視野からロシアを見ることができるからです。こう した観点から、センターは、2007 年度科学研究費補助金・特定領域研究に、プロジェクト 「地域大国ロシア:旧帝国空間の再編」をもって応募しています。北海道大学は、このイニシ アチブを評価し、今年度、重点配分経費を支給してくれました。この予算を使って、スラブ 研究センターは、きたる2月22-23 日に国際ワークショップ「地域大国ロシア: その国際的 地位と2007-08 年選挙サイクル(Russia as a Regional Power: Its International Status and the Elections in 2007-2008)」を開催いたします。
本ワークショップでは、ロシアの政治・経済・国際関係に関する著名な専門家がセンターに 集結し、ポスト・プーチンの政党・政治体制や連邦制・地方政治の展望、エネルギー大国とし てのロシア、冷戦と日露関係、さらには旧ソ連地域の未承認国家に関して議論がおこなわれ ます。報告者は、内外を問わず、全体的には若手を主体としており、新しい世代のロシア研 究を世界にアピールする場ともなります。そして、本ワークショップを、「地域大国ロシア」 の全体像を多様な観点から把握する第一歩にしたいと考えております。おりしも2007-08 年 選挙サイクル前夜であり、ロシア情勢は緊迫しています。このようなときにワークショップ を開催することは大きな意義があると思われます。
現在のところプログラムは以下のとおりですが、部分的な変更もありえます。センターの ホームページで随時更新いたしますので、ご確認ください。使用言語は全て英語です(通訳 無し)。皆様のご参加をお待ちしております。
また、関連企画といたしまして、2月25 日に早稲田大学において「岐路に立つロシアの マクロ政治制度:選挙サイクル前夜の大統領制と連邦制(Russia’s Macro-Political System at the Crossroads: Presidentialism and Federalism on the Eve of the 2007-08 Electoral Cycle)」(主 催: 早稲田大学21 世紀COE「開かれた政治経済制度の構築」) が開催されます。報告者は、 本ワークショップに参加する外国人政治学者ですが、各自、若干異なるテーマについて報告 いたします(詳細は追ってお知らせいたします)。あわせてご参加ください。
Russia as a
Regional Power: Its International
Status and the Elections
in 2007-2008 |
(22-23 February, 2007, Slavic Research Center of
Hokkaido University ) |
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February 22 |
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13:00-15:15 |
Session I:
Political Regime in the Post-Putin
Era |
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Papers: |
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Chair: |
Kimitaka Matsuzato (SRC, Sapporo) |
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Discussant: |
Oleh Protsyk (European Center for Minority Issues,
Flensburg) |
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15:30-18:00 |
Session II: Russia's
Federalism in the Post-Putin Era |
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Papers: |
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Chair: |
Atsushi Ogushi (SRC, Sapporo) |
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Discussant: |
Vladimir Gel’man (European University, St. Petersburg) |
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18:30-20:30 |
Reception Party (Aspen Hotel) |
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February 23 |
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9:30-12:00 |
Session III: Russia as an
Energy Super Power |
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Papers: |
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Chair: |
Shinichiro Tabata (SRC, Sapporo) |
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Discussant: |
TBA |
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13:15-15:15 |
Session IV: Cold War and
Russo-Japanese Relations |
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Papers: |
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Chair: |
Akihiro Iwashita (SRC, Sapporo) |
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Discussant: |
David Wolff (SRC, Sapporo) |
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15:30-17:45 |
Session V: Unrecognized
States in Host-States' Politics |
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Papers: |
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Chair: |
Tomohiko Uyama (SRC, Sapporo) |
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Discussant: |
Kimitaka Matsuzato (SRC, Sapporo) |
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2月25 日 |
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関連企画「岐路に立つロシアのマクロ政治制度:選挙サイクル前夜の大統領制と連邦制」 (Russia’s Macro-Political System at the Crossroads: Presidentialism and Federalism on the Eve of the 2007-08 Electoral Cycle)( 主催:早稲田大学21 世紀COE「開かれた政治経 済制度の構築」) |
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報告者: |
Vladimir Gel’man (European University, St. Petersburg), Paul
Goode
(University of
Oklahoma), Tomila Lankina (World Resources Institute, Washington DC),
Oleh Protsyk
(European Center for Minority Issues, Flensburg) |
スラブ研究センターでは、21 世紀COE プログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」の一 環として、2007 年3月9日と10 日に、大阪大学21 世紀COE プログラム「インターフェイ スの人文学」の「世界システムと海域アジア交通」研究班と合同で、上記研究会を開催します。 これは、昨年度まで原暉之教授(当時)を中心にセンターで開催されていた、「ロシアの中の アジア/アジアの中のロシア」研究会の後継企画です。
本企画では、東北アジアの近代化にロシアの進出がどのような影響を与えたか、という問 題を中心に据えます。アジアの近代化を「西洋の衝撃」との関連から考察するパラダイムが、 近年見直されていますが、「ロシアの衝撃」と東北アジアの近代化の関連については、未だに 十分検討されていません。そこで今回、海域史やグローバル・ヒストリーの研究で顕著な実績 がある大阪大学COE の協力の下、多様な分野の専門家が一堂に会して、ロシアも含む東北ア ジアの近代化の全体像を議論することになりました。その議論を通じて、東北アジアを、西 洋史、東洋史、日本史という既存の枠組みを横断する「跨境する場」として提起することを 目指します。
現時点での参加予定者(北海道大学以外)は次のとおりです。 秋田茂(大阪大、イギリス史)、浅田進史(千葉大、ドイツ史)、荒武達朗(徳島大、中国史)、 岡本隆司(京都府立大、中国史)、木村和男(筑波大、カナダ史)、杉山清彦(駒澤大、中国 史)、塚瀬進(長野大、中国史)、原暉之(北海道情報大、ロシア史)、麓慎一(新潟大、日本 史)、桃木至朗(大阪大、ベトナム史)、矢後和彦(首都大、フランス史)、吉嶺茂樹(当別高 校、世界史教育学)、脇村孝平(大阪市立大、インド史)
センターでは、専任研究員と共に、日本の国立大学・公私立大学等に所属する客員教授・ 助教授が研究活動をおこなっています。以下の要領で次年度の客員教授・助教授の募集をい たします。
1.応募資格 | 人文・社会科学の諸分野でスラブ・ユーラシア地域を研究する者。 2007年4月1日現在63歳未満で、日本の国立大学・公私立大学の教授および助教授、または大学には属さないが、教授・助教授と同等の能力を有すると認 められる者。 |
2.募集人数 | 6名 |
3.勤務条件 | 任期は原則として1年。再任もあり得る。2007年度に15日間程度(休日を除く)、センターに滞在する。 日当・宿泊費および交通費相当額が支給される(なお、勤務条件については、2007年度の予算が未確定のため、今後修正される場合がある)。 |
4.その他の条件 | 客員教授・助教授は、センターの研究会等で少なくとも1度は報告を行うものとする。 また任期中の研究成果に基づく論文等を、雑誌『スラヴ研究』または『Acta Slavica Iaponica』に投稿することが望ましい(掲載は査読審査により決定する)。 |
5.選考方法 | 選考は、応募者が提案するセンターでの研究プロジェクト(期間1年)の内容を考慮しておこなわれる。 特に、センターの所蔵する資料を活用した研究プロジェクトが歓迎される。 |
6.応募締切日 | 2007年2月16日(金)(必着) |
7.選考結果通知 | 2007年3月下旬(予定) |
8.発令予定年月日 | 2007年5月1日(予定) |
9.提出書類 |
※提出し
ていただく書類は返却しません。 |
提出先及び 問い合わせ先 |
〒060-0809 札幌市北区北9条西7丁目 北海道大学スラブ研究センター事務掛 TEL: 011-706-3156, FAX: 011-706-4952 e-mail: src@slav.hokudai.ac.jp |
COE= 鈴川・中村基金の奨励研究員制度を利用して、これまでに多くの大学院生がセンター に滞在し、センターおよび北大附属図書館の文献資料の利用、センターで開催されるシンポ ジウム・研究会への参加、センターのスタッフとの意見交換をおこない、実りのある成果を 挙げてきました。
今年度も昨年同様に募集をおこなう予定です。募集は若干名とし、助成対象者は原則とし て博士課程後期以上の大学院生です。助成期間は1週間以上3週間以内です。募集の開始は 2月中旬頃、締め切りは4月末を予定しています。募集要項・応募用紙をご希望の方はセンター までご連絡ください。なお、募集要項・応募用紙はセンターのホームページでも参照および ダウンロードできます。
10 月11 日、次の専任研究員セミナーが開かれました。
この報告は、近年のグルジアの地方選挙を題材として、グルジアの政治状況を分析したも ので、前田研究員がこのような時事的な問題のペーパーを専任研究員セミナーに提出するの は初めてのことでした。コーカサスの政治が注目を集めているだけに、グルジアの政治状況 の評価や分析手法の問題などをめぐって、興味深い議論が交わされました。
11 月6日、今年度第1回目の非常勤研究員セミナーが開かれ、以下の4名の方々が報告し ました。センターにおける昨今の研究対象地域の広がり具合を実感できた日でした。
ニュース107号以降の北海道スラブ研究会、センターセミナー、及びSES-COEセミナーの活動は以下の通りです。
10月20日 | ||
■ | C. ガディ(ブルッキングス研究所、米国) |
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“Resource Rents and the
Russian Economy”(SES-COEセミナー) |
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10月30日 | 第10 回東欧中域圏研究会 |
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■ | 木村護郎クリストフ(上智大) |
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「ドイツのスラヴ系少数民族ソルブの生き残り戦略と言
語イデオロギー:職場におけるソルブ語“ 禁止”をめぐる論争から」(SES-COEセミナー) |
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10月31日 | ||
■ | Y. レヴェンティス(在スコピエ ニューヨーク大学、マケドニア) |
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“Cyprus 1945-2005: Sixty
Years of Conflict” (SES-COEセミナー) |
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11月8日 | ||
■ | K. リーク(国際防衛研究所、エストニア) | |
「バルト=ロシア関係に関する懇談会」(センターセミ ナー) | ||
11月29日 | ||
■ | 本村真澄(石油天然ガス・金属鉱物資源機構) | |
「サハリン2プロジェクトをめぐっ て」(センター昼食懇談会) | ||
12月2-3日 | 「体制転換後におけるロシア内政」研究会 |
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■ | 津田憂子(早稲田大・院) |
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「大統領制と議院内閣制をめぐる議論の変遷:ロシアに
おける政治制度変更の可能性」 |
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■ | 大串敦(センター) |
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「政府党体制の制度化:『統一ロシア』の発展」; |
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■ | 溝口修平(東京大・院) |
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「経済改革をめぐる議会内会派の離合と集散,1990
-1993 年」 |
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■ | 安達祐子(上智大) |
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「ロシアにおける政治とビジネス:地下資源法をめぐっ
て」 |
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■ | 佐藤圭史(九州大・院) |
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「ソ連末期におけるリトアニア・ポーランド人自治問題
の刑事事件化:検察局事件番号『09-2-060-93』の解読を通して」 |
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■ | 長尾広視(センター) |
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「地方知事の三選問題」 |
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■ | 長谷直哉(慶応大・院) |
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「ロシア連邦制と開発政策:東シベリア・太平洋パイプ
ラインのルート決定過程を中心に」(科学研究費研究会) |
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12月6日 | |
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■ | 新納宏(国際協力機構) | |
「中央アジア諸国における市場経済化と地域の活性化」 (SES-COE セミナー) | ||
12月8日 | ||
■ |
Y. フリツァーク(リヴィウ国立大、ウクライナ) | |
“A Tale of the Two
Cities: Lviv and Donetsk in the Post-Soviet Ukraine”(SES-COE セミナー) |
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12月11 日 | 第11 回東欧中域圏研究会Minorities
in East European Meso-area: Beyond the “Triad” |
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■ | B. マイテーニ(ハンガリー科学アカデミー法学研究所) |
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“Multiculturalism in
Hungary” |
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G. シュヨク(同) | |
“Comments on the Independence of Kosovo” (SES-COE セミナー) | ||
12月16 日 | ||
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J. ミラー(ジョージ・ワシントン大、米国) | |
“Reading Putin in Russian and Soviet Literature: Alternatives to European Integration for the Former Soviet Union”(SES-COEセミナー) | ||
12月16日 | ||
■ | 賈慶国(北京大、中国) | |
“Shanghai Cooperation
Organization: China’s Experimentin Multilateral Leadership”; |
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■ | 中居良文(学習院大) | |
「中国のユーラシア戦略:意図と能力」 |
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■ | 吉田修(広島大) | |
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「ユーラシアとインド:ナイドゥ・ペーパーを手がかり
に」; |
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■ | 岩下明裕(センター) | |
「現地報告:テヘランとデリー」 |
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■ | 趙宏偉(法政大) | |
「中国が目指す『国際新秩序』とユーラシア秩序の新形
成」; |
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■ | 三船恵美(駒沢大) | |
「中国の対中央アジア戦略」(科学研究費研究会) |