スラブ研究センターニュース 季刊 2005年 秋号 No.103 index
今年度の冬期国際シンポジウムは12月14~16日に、「中・東欧の地域:過去と現在」というタイトルのもとで開催されます。国際交流基金の助成で 2003年から毎年開催されている〈中・東欧=日本21世紀フォーラム〉の第3回目の会議をスラブ研究センターの冬期シンポジウムと重ねて開催するもので あり、あわせて21世紀COEプログラムの中の「東欧中域圏」プロジェクトの一環でもあります。また、EU Institute in Japan (EUIJ)の東京コンソーシアムとの共催のプログラムであり、さらに、本年がEU市民交流年ということで、その中のプログラムとしても登録されていま す。
このシンポジウムは、中・東欧の歴史と現在を、「地域」という概念を中心において、さまざまな視角から検討することを目的としています。中・東欧では多様 な空間認識が重層的に重なり合っていて、しかもそれは時代の変遷とともに姿を変えてきました。この場合の「地域」とは領域国家という空間と重なるものも含 みますが、国家を越える大きな「地域」や国家の中の小さな「地域」も含まれます。おそらくそのような「地域」に関する空間認識の理解のありようは、どのよ うな学問領域で議論するのかということでも異なり、そのような意味でも姿は多様であると思われます。そこで、今回のシンポジウムは国際関係論、歴史学、文 学、言語学など、さまざまな学問領域の専門家が出会い、学際的な討論をおこなう場にしたいと考えています。中・東欧という地域の専門家が会議の中心を占め ますが、北欧やギリシアという場所での議論や、カリーニングラード論ないしポーランド人のロシア認識という話題も含まれています。狭い意味での「東欧」と いう殻を打ち破る企画にしたいと思っていますので、幅広い分野からの研究者がフロアーから議論に参加して頂けることを期待しています。なお、報告と討論は すべて英語でおこないます。
北大の今年度「重点配分経費」による支援をうけて、「北海道とサハリン州:相互理解に資する歴史記述を求めて」を研究題目とする国際交流の推進プロ ジェクト研究がこの夏にスタートしました。国境を挟んで一衣帯水の関係にある北海道とサハリン州は、資源開発、環境保護、貿易振興、安全保障、自治体交流 などの分野で、近年ますます密接な国際的相互協力が求められ、さらに両地域間には未解決の領土問題が横たわっていることも周知の通りですが、そうした状況 下で両地域間に安定的なパートナーシップの関係を築くには何よりも相手地域に対して相互理解を深めることが不可欠であり、研究教育現場から発信しうるその 一つの手立てとして、歴史像の共有を視野に入れた歴史学分野の共同研究もまた価値ある国際貢献の意義を担っているであろう、というのが本研究の基本理念で す。ただしより具体的には、当方にサハリン島とクリル諸島からなる全サハリン州をカバーするだけの力量と蓄積がない上、与えられた時間的・財政的な枠から みても、とりあえずの研究対象をサハリン島に限定するのが得策であり、一方、サハリン州側において日本史研究(とくに北海道史研究)の萌芽があれば、その 育成は大いに支援・奨励されるべきであろう、とも考えています。
研究実施計画の概要は、①国際ワークショップ・講演会の相互開催、②文書館・図書館資料の相互利用、③「サハリン・樺太史セミナー」の随時開催、④出版計 画の策定、の4点を含みます。このうちすでにはじまっているのは③で、9月21日に「サハリン・樺太史セミナー(I)」をセンターの第11回「ロシアの中 のアジア/アジアの中のロシア」研究会として開催しました。次回の「セミナー(II)」は12月初頭に開催することを計画しています。また、①②について は11月初旬に北大から数名の研究者をユジノサハリンスクに派遣し、来年の早い時期にサハリン州から数名の研究者を札幌に招聘して、共同研究を実施するこ とが予定されています。成果報告は、来年度の早い時期に今年度重点配分経費による他のプロジェクト研究とともに発表の場が与えられる予定です。お問い合わ せは、原(研究代表者)まで。
ロシアのサハリン国立大学歴史学部長で、現代ロシアにおけるサハリン史研究の第一人者として知られるミハイル・ヴィソコフ(Михаил Высоков)氏 が国際交流基金の招聘フェローとして、本年7月上旬から1年間の予定でセンターに滞在しています。日本での研究テーマは「19-20世紀の日本、ロシア帝 国およびソ連邦によるサハリン植民の歴史的経験」で、センターではすでに「サハリン・樺太史セミナー(I)」(別項参照)などの場で研究報告をされていま す。受け入れ研究者はセンターの原です。
2006年度21世紀COE外国人研究員若干名の募集を始めました。募集期間は2005年11月14日~12月24日。滞在期間は 2006年6月~2007年3月の間の1~3ヵ月間です。条件その他の詳しい要項・応募用紙(英文)はセンターのホームページ(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/fvf21coe/fvf21coe.html) に掲載されています。
ニュース102号以降の北海道スラブ 研究会およびセンター研究会の活動は以下の通りです。
7月24日 | ||
■ | 東条碩夫(音楽評論家) |
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「ゲルギエフ『リング』の世界」(北海道スラブ研究
会)) |
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8月23日 | 共同研究『プラトンとロシア』研究報告会 |
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■ | 杉浦秀一(北大) |
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「ウラジーミル・ソロヴィヨフとプラトン」 |
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■ | 根村亮(新潟工科大) |
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「セルゲイ・トゥルベツコーイのロゴス論について」 |
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■ | 宇佐美森吉(北大) |
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「近代ロシア美術のイメージ論」 |
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■ | 望月哲男(センター) |
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「ドストエ
フスキイの中のプラトン」 |
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■ | 大須賀史和(神奈川大) |
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「ローセフとプラトン主義」 |
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■ | 貝澤哉(早稲田大) |
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「パーヴェル・フロレンスキイのプラトン論」 |
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■ | 川名隆史(東京国際大) |
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「19世紀ポーランドの神秘主義とプラトニズム」;北
見諭(神戸市外国語大)「ヴャチェスラフ・イワノフとプラトン」(SES-COEセ
ミナー) |
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■ | 北見諭(神戸市外国語大) |
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「ヴャチェスラフ・イワノフとプラトン」(SES-
COEセ
ミナー) |
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8月26日 | ||
■ | G.ハーニン(シベリア公務アカデミー、ロシア/センター21世紀COE外国人 研究員) | |
「雪解けとペレストロイカはスターリンのもとで始まっ た?(仮説の提起)(ロシア語)」(SES-COEセミナー) | ||
9月13日 | ||
■ | G.ハーニン(同上) | |
「21世紀初めにおけるロシア経済の現状と展望(ロシ ア語)」(SES-COEセミナー) | ||
9月20日 | ||
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A.ホロシケヴィチ(スラヴ学研究所、ロシア) | |
「ポスト・ソヴェト期のベラルーシ史学(1991-
2004年):16世紀のベラルーシの発展をめぐって(ロシア語)」(センターセミナー) |
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9月21 日 | 第11回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会/サハリン・樺太史セミナー(I) |
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■ | 梅木孝昭(武四郎の道研究会) |
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「サハリンに日露戦争の戦跡を訪ねて」 |
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■ |
M.ヴィソコフ(サハリン国立大、ロシア) | |
「ロシアにおけるサハリン史研究:ペレストロイカのは じまりから今日まで」 | ||
■ |
望月恒子(北大) | |
「チェーホフ『サハリン島』の歴史的記述について」 | ||
■ |
竹野学(北海道大学経済学研究科) | |
「戦前期樺太における商工業者の活動について:樺太農 業開拓との関係を中心に」(SES-COEセミナー) | ||
10月5 日 | ||
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M.アウエゾフ(カザフスタン国立図書館) | |
"Introduction into Intellectual History of Central Asia" (センターセミナー) | ||
10月8日 | 第12回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会 |
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■ | I.サヴェリエフ(名古屋大) | |
「移民と移民受入政策:極東ロシアにおける東アジアか
らの移民(1860~1917)」 |
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■ | 荒武達朗(徳島大) | |
「19世紀後半-20世紀初頭北満洲をめぐる漢民族移
住の進展とその変容:“辺境”像の再検討」 |
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■ | 原暉之(センター)、石川亮太(佐賀大)、神長英輔(日本学術振興会)、左近幸村(北大・院) | |
「パネルディスカッション:アジア海域史とロシア極
東」(SES-COEセミナー) |
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10月25日 | ||
■ | T.デグラフ(フリージアン・アカデミー、オランダ/センター21世紀COE外 国人研究員) | |
"The Use of Historical
Material for the Study of the Border Area between Japan and Russia and
Its Population" (SES-COEセミナー) |
兎内勇津流講師は、2005年8月1日付けで助教授に昇任しました。