スラブ研究センターニュース 季刊 2005年 春号 No.101 index
今年度の夏期国際シンポジウムは、「中央ユーラシアの地域的・超域的ダイナミズム:帝国、イスラーム、政治」と題して、2005年7月7日(木)~8日 (金)に開催されます。このシンポジウムは、近現代中央ユーラシアにおける国・地域単位の動きと、それらを越える動きとを学際的に検討し、21世紀COE 「スラブ・ユーラシア学の構築」における地域論の深化に貢献することを目標としています。対象地域は中央アジア(新疆ウイグルを含む)、コーカサス、ヴォ ルガ地域にまたがり、ロシア帝国論、イスラーム研究、ソ連民族政策史、政治体制論、文化人類学など多角的な視点から議論をします。多くの皆様の参加をお待 ちしています。
使用言語は英語、一部ロシア語(同時通訳つき)です。現段階でのプログラムは前頁の通りですが、部分的な変更もあり得ます。センターのホーム ページで随時更新しま すのでご確認ください。問い合わせは宇山までお願いします。
夏期国際シンポジウムの翌日、7月9日(土)に、地域研究コンソーシアム・シンポジウムを北海道大学学術交流会館で開きます。総合タイトル「新しい 地域研究の方法を求めて:地域、コミュニティ、国際関係」(仮)のもとに、「現代アジア学(仮)」、「地域研究における『山地』と『平地』」、「日本・ラ テンアメリカ関係」の3セッションを予定しています。これは、地域研究コンソーシアムのアンブレラ・プログラム「グローバル化時代の新地域形成」を中心 に、複数の21世紀COEプログラムと連携しながら開催するものです。使用言語は日本語です。詳細は後日、センターおよびコンソーシアムのホームページで お知らせします。
2004年10月にロシアと中国の国境問題が全面解決したのを契機に、日本とロシアの国境問題も解決への気運が高まっています。しかし、同時に日 本とロシアの言い分は真っ向から対立し、具体的な解決への展望はいまだ見いだせません。そこで今回の講座は、日ロ交渉の昨今の動向を念頭におきつつも、あ えて日ロ以外の国境問題に焦点を絞り、世界の事例を学ぶことで「北方領土問題」へ新たな光を当てることを目的に企画されました。
世界に眼を向ける理由のひとつは、およそ国境問題がその当事国間の歴史のなかで考察されるかぎり、解決策の発見が容易ではないという点にあります。積み重 なった感情的対立や歴史のわだかまりは、しばしば双方のナショナリズムに火をつけ、国境問題をより複雑にし、解決を難しいものとします。これは昨今の竹島 問題(日本と韓国)、尖閣列島問題(日本と中国)の先鋭化をみてもあきらかです。
今回の講座では、ユーラシア及び隣接地域を中心として、その国境問題を広い視野で学ぶことを計画しています。ヨーロッパ、コーカサス、中央アジア、イン ド、パキスタン、中国、韓国など様々な地域の国境問題を、歴史・民族・国際関係などの重層的な視点で比較・検討します。講座を通じて、いろいろな地域の内 実やその困難さがあぶり出され、国境問題解決の成功例や失敗例が真摯に受け止められ、日本とロシアの問題解決にむけてのなんらかの教訓が引き出されればと も考えています。
本講座は21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」との連携協力のもとで開催されるため、例年より多くの参加者を募集いたします(100 名)。また講師も各地域の国境問題に関して、第1人者をそろえることができました。とくに南アジア、朝鮮半島、中国の国境問題をあわせて学ぶには、本講座 は最良の機会だと確信します。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。(申込締切:5月2日、問合せ:センター事務室〈℡011-706- 2388〉)。
公開講座日程(毎週月・金曜日 午後6時30分~8時30分)
日 程 | 講 義 題 目 | 講 師 | |
第1回 | 5月9日(月) | 日本の外で「固有の領土」論は説得 力を持つのか:欧州戦後史の中で考える | 林忠行 (センター) |
第2回 | 5月13日(金) | 国境と民族:コーカサスの歴史から 考える | 前田弘毅 (センター) |
第3回 | 5月16日(月) | 旧ソ連中央アジアの国境:20世紀 の歴史と現在 | 帯谷知可
(国立民族学博物館地域研究企画交流センター) |
第4回 | 5月20日(金) | カシミールと印パ・中印国境問題 | 吉田修 (広島大学) |
第5回 | 5月23日(月) | 竹島問題と日本の課題 | 下條正男 (拓殖大学) |
第6回 | 5月27日(金) | 中国と日本・ASEAN間の国境問 題:波立つ東シナ海と平穏な南シナ海 | 石井明 (東京大学) |
第7回 | 5月30日(月) | 中ロ国境問題はいかに解決されたの か?:「北方領土」への教訓 | 岩下明裕 (センター) |
2005年4月から2006年3月にかけての21世紀COE「スラブ・ユーラシア学の構築」短期外国人研究員の公募は2004年12月24日をもっ て締め切られ、厳正な選抜の結果、次の外国人研究者が招聘されることになりました。
ゴルノ
フ、セルゲイ・ヴァレリエヴィチ(Golunov,
Sergey Valerievich) |
ヴォルゴ
グラード国立大学地域研究国際関係学部助教授(ロシア) |
ハーニ
ン、ギルシュ・イツィコヴィチ(Khanin, Girsh
Icikovich) |
シベリア
公務アカデミー教授(ロシア) |
メイラ
ク、ミシェル(Meylacq, Michael) |
ストラス
ブール大学スラブ諸言語学部教授(フランス) |
サニキ
ゼ、ギオルギ(Sanikidze, George) |
グルジア
科学アカデミー東洋学研究所所長 |
デ・グ
ラーフ、チェルド(DeGraaf, Tjeerd) |
オランダ
科学アカデミー・フリージアン・アカデミー研究員 |
滞在期間は、ゴルノフ氏、メイラク氏、サニキゼ氏が7月初頭からの2ヵ月間ないし10週間、ハーニン氏は8月初頭からの10週間、デ・グラーフ氏は 9月初頭からの2ヵ月間を予定しています。
ゴルノフ氏は、ロシアと中央アジア諸国の国境地域研究の専門家で、とくに国境地域における麻薬取引についての実証的な研究の成果を夏期国際シンポジウムで 発表することが予定されています。
ハーニン氏は、1990年代初頭から、ソ連期のマクロ経済統計に対する独自の分析で成果を挙げてこられた経済学者として国際的に知られています。滞在期間 中には、ポストソ連期のロシアにおけるマクロ経済の公式統計に対するオータナティヴな分析を中心に研究をおこないます。 メイラク氏は1960年代後半にレニングラード言語学研究所大学院で博士候補称号を取得され、80年代末から西欧の諸大学で客員教授として研究を続けてき ました。ロシア人亡命者の芸術の広いジャンルにおける活動と、そのペレストロイカ期以降のロシアにおける受容について研究と並行して、亡命芸術家の全集や メモワールの編集でも大きな業績を挙げています。
サニキゼ氏はグルジア、カフカズおよびイランにおけるムスリムについて中世史から現代史にいたる広範な研究でグルジアの東洋学を代表する若手研究者です。 滞在期間中には、現代のグルジアおよびカフカズ諸地域におけるムスリム・アイデンティティの多様性と共通性などのテーマでの研究をおこなう一方で、夏期国 際シンポジウムでの報告も予定されています。
デ・グラーフ氏はピルスツキ研究やサハリンの北方諸民族言語研究などの分野で日本の研究者との共同研究を進めてきたことで知られています。今回の滞在期間 には、日本とロシアの国境地域における先住諸民族間の関係の形成史および現状についての研究を、これまで日本の研究者と積み重ねてきた研究実績を基盤に進 める予定です。
ニュース100号以降の北海道スラブ 研究会およびセンター研究会の活動は以下の通りです。
2月7日 | ||
■ | 佐々木史郎(国立民族学博物館) |
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「ロシア極東地域先住民族の人口移動はディアスポラ
か?」(SES-COEセミナー) |
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2月15日 | ||
■ | 諫早勇一(同志社大) |
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「文集『道標転換』と雑誌『道標転換』」(SES-
COEセミナー) |
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2月19日 | ロシア文化研究シンポジウム「近代ロシア文芸への多元
的まなざし」 |
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■ | 小椋彩 | |
「レーミゾフとカンディンスキイ」 | ||
■ | 福間加容・望月哲男 | |
「ソローキンと絵画」 | ||
■ | 鴻野わか菜 | |
「ベールイとシュタイナー:《モスクワ》のパノプチコ ン」 | ||
■ | 山本健三 | |
「Iu.F.サマーリン『リガからの手紙』とオス トゼイ問題」 | ||
■ | 大武由紀子 | |
「ソヴィエト プロパガンダ・ポスター:グスタフ・ク ルーツィスの場合」 | ||
■ | 古川哲 | |
「孝行息子の帰還:アンドレイ・プラトーノフ 『ジャン』における〈無葛藤〉と 孤児の主題」 | ||
■ | 越野剛 | |
「ナポレオン戦争と文化的なまなざし」 | ||
■ | 大須賀史和 | |
「第一次大戦とスラヴ主義:ベルジャーエフとモスクワ のスラヴ派」 | ||
■ | 阿部賢一 | |
「プ レドラグ・マトヴェイェーヴィチの《書簡集》について」 | ||
■ | 佐藤亮太郎 | |
「エマヌイル・カザケーヴィチの戦争小説:戦後の『大 祖国戦争』へのまなざし」 | ||
■ | 本田登 | |
「不条理作家としてのハルムスに関する一考察」 | ||
■ | 岩本和久 | |
「ウリツカヤの作品をめぐって」 | ||
■ | 中村唯史 | |
「ペレーヴィンの最新長編と現代ロシア文学」 | ||
■ | 古賀義顕 | |
「キリル・メドヴェージェフの詩について」(SES- COEセミナー) | ||
2月22日 | 第4回東欧中域圏研究会 |
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■ | 京極俊明(名古屋学芸大) | |
「モラヴィアの初等教育における民族問題」(SES- COEセミナー) | ||
2月28日 | 科研「ポスト冷戦時代のロシア・中国関係とそのアジア
諸地域への影響」研究会 ラウンドテーブル「国境・移民問題を越えて:中国とロシアの地域協力は新時代を迎えたのか?」 報告者: |
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V. ラーリン(ロシア極東諸民族歴史・考古・民族学研究所) | |
L. ラーリナ(同) |
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イン、J.(中国黒龍江省社会科学院シベリア研究所) |
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3月15 日 | センター客員教授による報告会 |
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■ | 長與進(早稲田大) |
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「最近のスロヴァキア語の動向:体制転換以後の新しい
語彙と語義説明をめぐって」 |
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■ |
斎藤元秀(杏林大) | |
「占領期におけるソ連の対日政策、1945-51年」 (センター研究会) | ||
3月16 日 | 第5回東欧中域圏研究会 |
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■ |
東原正明(北海学園大・院) | |
「極右政党としてのオーストリア自由党:ハイダー指導 下の台頭期を中心に」(SES-COEセミナー) | ||
3月29日 | ロシア外交研究会 |
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■ | P. ラングシマポーン(オックスフォード大、英国) | |
"Russian Foreign Policy
Elite Perceptions of East Asia: 1996-2003" (SES-COEセミナー)) |
応募者の中から慎重な審査をおこなった結果、新規に3名の方々が本年度の21世紀COE非常勤研究員に採用されました。また2名の方が前年度に引き続き継 続となります。
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毛利 公美 (もうり・くみ) | 東京大学 大学院人文社会系研究科博士課程修了 | 亡命ロシア文学・現代ロシア文学 | (継続:COE特任研究員) |
井澗 裕 (いたに・ひろし) | 北海道 大学大学院工学研究科博士課程修了 | 近代サ ハリンの歴史と文化 | (継
続) |
荒井 幸康 (あらい・ゆきやす) | 一橋大 学大学院言語社会研究科博士課程修了 | モンゴ ル・ブリヤート・カルムィクの言語政策 | (新
規) |
永山 ゆかり (ながやま・ゆかり) | 北海 道大学大学院文学研究科博士課程終了 | ア リュートル語(チュクチ・カムチャッカ語族) | (新
規) |
福田 宏 (ふくだ・ひろし) | 北海道 大学大学院法学研究科博士課程修了 | チェコ
社会における多極化とネイション形成 |
(新
規) |
センターで今年度、学振特別研究員として在籍するのは以下の2名の方々です。
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飯尾唯紀(いいお・ただき) | 北海道大 学大学院文学研究科博士課程修了 | ハンガリー近代史 | (継続) |
越野剛(こしの・ごう) | 北海道 大学大学院文学研究科博士課程修了 | 19世 紀ロシア文学、ベラルーシ文学 | (継
続) |