サハリン州環境保護国家委員会、環境安全保障に関する同委員会、権力・管理機関
およびサハリン大陸棚油田開発プロジェクト関係者の活動に関する報告

1 環境調査およびバックグラウンドの水文気象学的特性の調査

 環境の安全を保障し、環境を保護し、自然資源、主として陸海生物資源の状態の目に見える悪化を防止するために、サハリン北東部石油炭化水素産地の開発に関する実質的な事業が始まるまでの準備期間中、同州では、この事業が漁場その他の生物資源に与える影響の研究、自然環境状態のバックグラウンド的特性の明確化、海洋産地の環境上根拠のある安全な事業遂行の条件を作り出すための海外の経験の研究といった、多くの活動が行われており、そこには以下のものが含まれている。

1) 1990年7月−9月、極東水文・気象研究所によって3回の生態学探検が行われた。サハリン州北東部大陸棚石油・ガス田地域のバックグラウンド的生態学的条件の研究を目的としている。

2) 「サハリン北東部とその大陸棚の石油ガス鉱床地域における、動物界・植物界の状態の環境評価」というテーマの科学・調査活動が行われた(サハリン漁業・海洋学研究所、1990−1991)。

3) 「掘削溶液・残留物投棄の評価、および掘削溶液・残留物・油層水投棄とその環境への影響の状態観察」というテーマで、サハリン漁業・海洋学研究所の参加の下、コンソーシアム「サハリン・エナジー」により、ルンスコエ鉱床、ピリトゥン・アストフスコエ鉱床の低毒性掘削水溶液・掘削残留廃棄物の海洋投棄を伴う実験的掘削計画の実施に関する報告書が準備された(1992年、マラソン、石油技術センター)。

4) 掘削溶液成分の毒性評価に関する報告書が準備された(1990年、太平洋漁業・海洋学研究所)。

5) 学調査活動「石油ガス工業コンプレクスの影響下にある極北・辺境海域の環境変容調査ならびに自然保護措置設計の科学的・技術的基盤の作成」に関する報告書が準備された(1990−1993年、「サハリンモルネフチェガス」海洋石油科学・設計研究所)。

6) ウファ労働・エコロジー医療科学調査研究所の報告書「地質調査産業に会社『バルロイド』の掘削溶液成分を適用する可能性について」が準備された(1993年)。現在、この会社の掘削溶液の成分のために、漁業水域を対象とする限界許容濃度が定められている。

7) キリンスコエ鉱区において、1994年の掘削期にIGS「Trias」とともに行われた野外水文気象・生態学作業に関する報告書(1994年、GP DMIGEとサハリン漁業・海洋学研究所)。

8) 1994年にサハリン大陸棚のロジンスコエ、バウチンスコエ、アルクトゥン・ダギの各鉱床で行われた、基礎的(バックグラウンド的)生態系情報収集に関する報告書(エクソン・ソデコ、1994−1996年。実施者:ロシア科学アカデミー極東支部技術設計研究所、ロシア科学アカデミー極東支部海洋学研究所、全ロシア海洋石油ガス科学調査・設計研究所、太平洋漁業・海洋学研究所、サハリン漁業・海洋学研究所、ロシア科学アカデミー極東支部海洋生物学研究所、ロシア科学アカデミー極東支部TIBOKh、GIPEG、大陸棚アソシエーション)。

9) ダギン鉱区の土木地質学的・水文気象学的・生態学的調査に関する報告書が準備された(DVMIGE、1995年)。

10) サハリン漁業・海洋学研究所中央実験室、DVMIGE中央実験室およびアメリカの独立系諸実験室で得られた水文・化学的観察・分析の諸結果の比較に関する報告書、1995年。

11) 報告書「サハリン島のための石油流出拡大のモデル化」が準備された(カナダ石油調査研究所、1995年)。

12) 報告書「チャイウォ湾の鳥類」(国際水文プログラム・ファウナ、1995年)。

13) 報告書「プロジェクト『サハリン−2』の第一段階における、ピリトゥン・アストフスコエ鉱床もしくはその近隣区域の海底考古学的区域の存在調査」(ユジノ・サハリンスク教育大学考古学研究室)。

14) ピリトゥン・アストフスコエ鉱床における環境の状態(生態学的調査の結果に関する報告書、サハリン・エナジー、1995年)。

15) サハリン島地区における、オホーツク海の海鳥・水鳥に関する文献上および未刊行データの概観(太平洋漁業・海洋学センター、ウラジオストク市、科学研究センター・ファウナ、モスクワ国立大学、1996年)。

16) サハリン北東部大陸棚ピリトゥン・アストフスコエ鉱床のための、海洋保護の水文気象条件の記述とバックグラウンド生態学的条件の特徴づけ(サハリン水文気象業務管理局、極東極東水文・気象研究所、1996−1997年)。

17) サハリン−Tおよびサハリン−Uプロジェクトのライセンス区域における、地盤の特性、氷の条件、水文気象・海洋地理学的パラメータの調査(サハリン・エナジー、エクソン、1996年)。

18) 1996−1997年、坑井ダギ−5・6・7の実験的試掘実施時に、環境モニタリングプログラムが実施された。

19) サハリン州環境国家委員会の指令により、1996年に野外探検活動が実施された地区における、漁労の集約度と生物対象に関する追加的なデータが得られた(汚染、船舶航行、海洋動物、鳥類、1996−1997年)。

20) 石油汚物流出のモデル化(極東極東水文・気象研究所、1997年)。

21) 海洋環境への掘削溶液・残留物・油層水投棄のモデル化と、建設作業時の影響の評価(極東極東水文・気象研究所、1997年)。

22) サハリン北東部大陸棚のピリトゥン・アストフスコエおよびルンスコエ石油ガス鉱床開発地区における、海洋生物資源のバックグラウンド状況の記述(全ロシア漁業・海洋学研究所、太平洋漁業・海洋学センター、サハリン漁業・海洋学研究所)。

23) サハリン北東部大陸棚のピリトゥン・アストフスコエ鉱床開発第一段階における開発井実施時の、サハリン北東部大陸棚生物資源への起こり得る損害の評価と生物資源の保護(太平洋漁業・海洋学センター、1997年)。

24) 氷の条件に関するデータの準備(サハリン・ギドロメット、1996−1997年)。

25) サハリン島とロシア極東地区の近隣水域で夏期をすごすコクジラの研究。石油ガス採取関連作業による否定的な影響のモニタリング・調査・予防プログラム(1996−1997年、テキサスA&M、ロシア科学アカデミー極東支部カムチャッカ総合科学研究所)。

26) 海底パイプライン設計の技術的条件の作成(VHIIST、1996−1997年)。

27) 1996−1997年結氷期の氷研究の分析。『Molikpaq』プラットフォームに対するグローバルな氷の負荷の評価(1997年)。

 州の環境基金からは、大陸棚における作業遂行時の生態学的安全の保障と関連した次のような活動に資金供給された。
 1997年−科学技術活動「サハリン大陸棚の掘削作業・石油採取地区における、総合的モニタリングシステム創設の方途の研究」(ロシア科学アカデミー極東支部海洋調査自動化手段特別建設ビューロー)。
・サハリン沖北東部の石油ガス開発地区における、レッド・ブック記載の動物と移動性野生動物の生息地図作成に関する作業(科学技術センター「ファウナ」)。
・サハリン州環境国家委員会の指令による、自揚式浮遊式プラットフォームと付随船舶の従業員により行われる野外観察のための便覧見本の作製(科学技術センター「ファウナ」)。
 1998年には、国家環境統制の組織化と保証、通信手段によるサハリン大陸棚の研究・開発作業の実施、その他の必要な資材・設備による観測が計画されている(総額50万ルーブル)。科学調査活動「サハリン州のコンピュータ地図作成情報システムの創設、環境統制のための専門的評価の現行モデルの整備」が実施されている。GIKOS主導的分析研究室の評価が行われ、国家環境バックグラウンドモニタリングに関するサハリンギドロメットの活動遂行に対して資金が割り当てられた(20万ルーブル)。
 これら全ての目的のために、予算外環境基金の資金だけで、1997年価格で11億5300万ルーブルが振り向けられた。

石油汚染に対する対処の実践的学習

 学習(1997年6月、石油汚染の対処に関するユジノサハリンスク市における本部演習、コルサコフ市における石油による海洋汚染除去サハリン管理局見学)。関連諸組織、とくに自然保護関連の50以上の専門家から証言を得た。
 1997年8−9月、ノグリキにおける自然保護設備の設置・試験に関する理論的・実践的授業。
 1998年5月、アニワ湾において、石油汚染防止に関する演習が行われた(民間防衛・非常事態総管理局、石油による海洋汚染除去サハリン管理局、大陸棚開発会社・参加者、権力・管理機関、自然保護機関)。

石油汚染への対処に関する有効な規制措置へ向けた準備体制を保証するための、設備・資材ストックの形成

 現在、サハリン州の領域では、事故による石油流出やその他の事件が起きた場合、石油汚染とたたかうための次のような自然保護設備のストック・処理能力が形成されている:
 1)石油による海洋汚染除去サハリン管理局
  ・特殊船「ラドン」「アガト」
  ・汚染防止フェンス 1200m
  ・石油掃海具 2台
  ・海洋表面からの石油回収・汲み出し装置(スキマー) 2台
  ・タンクからの石油汲み出し装置 1台
 2)エクソン石油ガス
  ・フェンス設置艇
  ・設備セット付スキマー、柵掃海具
  ・フェンス 300m
  ・フェンスリフト
 3)閉鎖型株式会社「ペトロサフ」
  ・水上石油回収スキマー
  ・汚染石油を含む廃棄物の焼却炉
  ・汚染防止フェンス 420m
  ・サハリン製泥炭収着剤
  ・粒状輸入石油収着剤
  ・石油吸着用ナプキンの事故対策向けストック
 4)公開型株式会社「ロスネフチ−サハリンモルネフチェガス」
  ・砕氷・救助船「デイモス」
  ・石油回収装置RBS−10「スキマー」
  ・汚染資材焼却炉
  ・流出石油回収用汎用装置KO−518
 サハリン州の領域では、「サハリンモルネフチェガス」研究所の専門家によって作成された技術に基づき、掘削機で採取された地域のピートモスとセルロース製紙生産の廃棄物から、疎水性の泥炭吸着剤を製造する企業が設立されている。生産量は原料の埋蔵量によっては制限されない。製品には競争力があり、品質証明書を有している。

環境モニタリング

 サハリン州環境保護国家委員会とその他の関連組織の専門家によって、大陸棚開発参加者向け環境モニタリングプログラム(国家および官庁)への提案が準備された。ロシア水利委員会、ロスコムギドロメット、ロシア漁業委員会、ロシア連邦環境国家委員会の側から、このプログラムの作成に関するコメントと提案がなされた。これらの提案は、1996−1998年の季節のための官庁モニタリングプログラムの基礎となっている。
 1997年には、国家環境モニタリング地域プログラムの作成作業が、ゴスコムギドロメットによって始められた。極東極東水文・気象研究所に委託され、そこにはサハリン州環境国家委員会の管理下にある基礎資料が送られることになっている。作業の遂行者であるサハリン水文気象業務管理局には、州の予算外環境基金の資金から財政支援がなされる。
 1997年の季節には、大陸棚における全ての作業は、自然保護機関―州委員会とサハリン地域特別海洋監督局の恒常的な統制下で行われた。
 サハリン州国家環境委員会のイニシアチブにより、有害で危険な生産および消費者廃棄物の蓄積・保管・無毒化のための実験場を州の領域内に創設する作業が行われる(国家環境保護委員会の勧告による、企業化調査の用地調査と作成)。1997年には、州の環境基金の資金により、州内で形成される有害廃棄物の目録作成が行われたが、その結果は、企業化調査による州実験場の設定を修正するのに役立つだろう。
 当該問題に関する法創造の実践的経験を有する外国・地域権力機関の、法律と法的規範文書の研究作業が行われる。その目的は、大陸棚での作業時に環境的安全を保障する問題に関する州法案の作成にあり、その内容は、米国の石油汚染法に類似したものである。

課長  G.A.コスチェンコ


TOPへ戻る