研究代表者:村上 隆(北海道大学スラブ研究センター・教授)
研究課題:サハリン大陸棚石油・天然ガスの「開発と環境」に関する学術的研究
研究期間:平成10年〜12年の3年間
研究計画の目的
21世紀初頭にサハリン北東部大陸棚では大規模な石油・天然ガスの開発が本格化する。開発にともなって、 経済成長か環境保全かのトレードオフ(二律背反)の問題をどのように解決するかが重要になってきている。 本学術調査および基盤研究調査では、自然・気象条件の類似した北海、アラスカの経験を踏まえて、学際的視点から「環境と開発」 の在り方を検討することを目的としている。
研究計画の必要性および期待できる成果
本研究の特徴は、サハリン大陸棚の「開発と環境」の二律背反問題を社会科学、自然科学および人文科学の観点から北海道大学の研究者を中心に、総合的に分析することにある。
1. 本調査の必要性
発展途上国的体質を色濃くもつサハリン州では経済発展の切り札として大陸棚の石油・天然ガス開発が脚光を浴びている。しかし、東南アジアでは「開発と環境」の学術調査・分析が進んでいるのに対し、ロシアを中心とする北東アジアの「開発と環境」のそれはほとんど実施されていない。日本海重油流出事故は、自然・気象、技術、経済等の分野での客観的情報と迅速な対応の必要性を痛感させた。自然・気象条件の過酷なサハリン大陸棚で開発が本格化する前に、客観的・学術的な立場からの分析が緊急に求められている。
2. 期待できる成果
@学術的研究成果を公表することによってロシア連邦および地方自治体の環境行政と環境保全策に生かすことが可能になる。
A「開発と環境」の共存が技術力によって克服可能であるかどうかを実証できる。
B隣接する北海道住民・地方自治体に対し客観的な情報を提供することによって、危機管理体制がとりやすくなる。
C開発による北東アジアへの経済波及効果およびエネルギーの分散化の問題を提起できる。
研究スタッフ
むらかみ たかし
村上 隆 |
北海道大学・ スラブ研究センター・教授 |
総括およびエネルギー経済 |
よしだ ふみかず
吉田 文和 |
北海道大学・ 経済学部・教授 |
開発と環境保全投資 |
はたけやま たけみち
畠山 武道 |
北海道大学・ 法学部・教授 |
ロシアの環境法の米国比較 |
あらい のぶお
荒井 信雄 |
札幌国際大学・ 人文・社会学部・助教授 |
開発と漁業問題 |
いのうえ こういち
井上 紘一 |
北海道大学・ スラブ研究センター・教授 |
原住民の生活・文化への影響 |
みながわ しゅうご
皆川 修吾 |
北海道大学・ スラブ研究センター・教授 |
NGO活動と地方政治 |
さえき ひろし
佐伯 浩 |
北海道大学・ 大学院工学研究科・教授 |
流出原油回収方法と環境への影響 |
きたがわ ひろみつ
北川 弘光 |
北海道大学・ 大学院工学研究科・教授 |
海洋構造物が海洋環境に及ぼす影響 |
あおた まさあき
青田 昌秋 |
北海道大学・ 低温科学研究所・教授 |
サハリン東岸の海氷の漂流 |
わかつち まさあき
若土 正暁 |
北海道大学・ 低温科学研究所・教授 |
サハリン東岸の海洋循環の季節変動 |
やまむら えつお
山村 悦夫 |
北海道大学・ 大学院地球環境科学研究科・教授 |
サハリンの環境地図解析 |
なかお しげる
中尾 繁 |
北海道大学・ 水産学部・教授 |
オホーツク海の水産増殖 |
あかは つねお
赤羽 恒雄 |
モントレー大学・ 国際政策学部・教授 |
開発に関連したサハリンの市民社会意識調査 |
アンナ・ワシリエヴァ |
モントレー大学・ 東アジア研究センター・研究員 |
ロシアの環境政策に関する資料分析 |