スラブ研究センターニュース 季刊 2004年 冬号 No.96 index
1 月28日(水) |
15:00−17:00
第1セッション(ラウンドテーブル)「中域圏を概念化する」
17:15−19:15
第2セッション「バルト諸国:ひとつの中域圏か否か?」
19:30−20:30
ビア・パーティー
1 月29日(木) |
9:30−11:
30
第3セッション「改革劣等生か、産みの苦しみか?ウクライナ、ベラルーシ、モルドワの比較研究」
13:00−14:45
第4セッション「ダゲスタンのイスラム」
15:00−17:00
第5セッション「脱共産主義国際秩序における非承認国家」
17:30−18:30
記念講演(札幌アスペンホテル)
18:30−20:30
レセプション(札幌アスペンホテル)
1 月30日(金) |
9:30−11:
30 第6セッション「脱帝国地域において変化する民族・歴史意識」
13:00−15:00
第7セッション「ロシア帝国西部地域」
15:15−17:15
第8セッション「科学と帝国:民族的マイノリティーのパーセプション」
1月31日(土) 若手研究者国際ワークショップ |
10:00−12:00 | 第1セッション「CISにおけるエリート」 |
13:00−15:00 | 第2セッション「帝国と社会」 |
15:15−17:15 | 第3セッション「CIS諸国の生存可能性」 |
国立大学法人化後の全国共同利用型研究及びそれを担う研究所、研究センターはどうなるのか。これはいま全国の研究所、研究センターが抱えている大問題です。全国共同利用のために措置されてきた人と予算は、大学の個別法人化という国立大学間の敷居が明確に生まれるなかで、どう位置づけなおされるのか。
スラブ研究センターはこれまで日本全国及び国際的なスラブ研究の発展に寄与することを第一目標として掲げ、全国利用型の共同研究の運営、国際シンポジウムの開催、研究資料の収集、若手研究者の育成、ウエッブサイトの設営など、幅広い活動をおこなってきました。このような全国型の研究組織は理系を中心にして日本に数多く存在し、諸外国とは異なった日本における研究体制の特色ともなっています。
今後、法人化された国立大学での研究が個別大学の内に閉じてしまわないような制度的仕組みを作ることは、全国共同利用研究施設の重大な責務ですが、これは法人化という法的な枠組みを前提にしますと、全国共同利用施設だけの力ではとても手に負えない大きな課題です。スラブ研究センターとしては学内の他の研究組織と共に法人化後の研究体制のあり方をめぐって、大学長に働きかけをおこなってきましたが、同時に全国の研究者の方々にも、是非とも、それぞれの所属の大学長に対して、大学の枠を越えた研究体制の維持と発展の必要性を訴えていただきたく、お願い申し上げます。
伝え聞くところによりますと、研究所や研究センターに関する事柄はそれを設置している大学の問題である、という見解が国立大学協会内での主流を成しているようです。しかし当センターもそうですが、全国共同利用型の研究所・研究センターは、私立大学も含めて一大学で運営することが不可能な、あるいは非効率な研究資料収集や研究会活動を集約的に担っており、研究所・研究センターを有していない大学の研究者の方々にとってこそ利用価値が高いと思います。法人化の論理によって、他大学に所属する研究者を利用面で差別しなければならないような事態が起きることになれば、日本における学術研究の根幹が揺らぐことになります。こうした全国共同利用型研究施設の重要性をご理解いただき、それぞれの大学に「圧力」をかけていただければ幸いです。
話はかなり遠回しになりましたが、センターではこうした法人化後の新たな研究体制の展開をにらんで、従来の全国型共同研究体制の維持を図ると同時に、他の地域研究機関と共同して、地域研究コンソーシアムを立ち上げる作業に加わってきました。ここで掲載するのは、このコンソーシアム結成への大きな一歩となる事業が新年早々に開催されたというニュースです。以下、今回の企画実現に至る経緯などを含めて、ご紹介をいたします。
そもそも世界の様々な地域に関する総合的な研究を全国的に企画運営する機関として地域研究企画交流センターが大阪の国立民族学博物館に設置されたのが10年ほど前でした。このセンターはスラブ研究センターと同様、全国的に組織された運営委員会によって運営方針が決定され、スラブ研究センターの長もその運営委員を兼ねてきました。一昨年来、この地域研究企画交流センター及びその運営に加わっている全国の地域研究機関(後出のワークショップ開催の呼びかけ機関)の長は、法人化後の新たな地域研究体制を整備し、さらに発展させる仕組みを生み出すべく、議論を積み重ねてきました。とりわけ2003年の夏からは「地域研究コンソーシアム」設立準備のための具体的作業がアジア・アフリカ言語文化研究所(東京外国語大学)、東南アジア研究センター(京都大学)、地域研究企画交流センター、そしてスラブ研究センターの若手研究者等が中心となって精力的に進められました。当センターからは田畑伸一郎、岩下明裕の両専任研究員が参加し、センター長も陪席しました。この準備作業班が母体となって日本学術振興会「人文・社会科学振興のための研究事業プロジェクト」に対して、「人間の安全保障」と題された共同研究事業申請もなされ、実際にも研究予算が措置されました。
以上の経緯を経て、2004年1月9日、10日の両日にかけて「地域研究コンソーシアム設立準備ワークショップ」及び国際シンポジウム「人間の安全保障:地域研究の視座」が開催されるに至りました。以下はこの二つの事業の主催者(スラブ研究センターもその一員)による開催趣旨を含めた案内文です。
また1月9日のワークショップの終了後、この企画の呼びかけ組織である6機関及び地域研究に関連する10の組織が合同して会合を持ち、「地域研究コンソーシアム設立準備委員会」が設置されました。今後はこの準備委員会が主体となって、4月初めをメドに正式な「地域研究コンソーシアム」立ち上げを推進することになります。正式立ち上げの際には改めてご案内を差し上げる予定です。またこのコンソーシアムにご関心をお持ちの方は家田(準備委員会議長)ないし準備委員会事務局が置かれている国立民族学博物館地域研究企画交流センターの押川文子センター長にまでご連絡下さい。
21世紀に入って、グローバリゼーションが世界のあらゆる地域の人びとの生活に浸透して世界の均質化をいっそう推し進める一方で、ローカルなレベルではむしろそれぞれの文化・伝統を強調して排他的に他者との差異化・差別化を求める動きが同時に相反するかたちで進行しています。また、環境、紛争、開発、人口、食糧など、個別の国家・地域の枠内ではとうてい解決できない、人類の存亡に関わる地球的規模の課題も山積しています。
このような状況下で地域研究に期待される社会的な役割も変わってきました。これまでの既存の地域の枠組みを超えた地域横断的研究、地域間比較・地域連関をも視野に入れ、なおかつそれぞれのディシプリンをもつ研究者が相互に協力できるような研究体制の確立が今求められています。すでに科学技術・学術審議会、日本学術会議、および地域研究に関する諸委員会においても、新しい地域研究の展開とそれを可能にするネットワーク型の研究体制構築の必要性が繰り返し指摘されています。また国立大学等の法人化のなかで、大学の壁を超えて研究の協力体制を構築する必要性は今一層切実なものになってきました。
私たち呼びかけ機関は、上記の諸点において認識を共有しつつ、地域研究にかかわる研究機関が広く協力し、開かれた協議体のもとに新しい地域研究を共同で促進するシステムの構築について協議を重ね、2003年5月「『地域研究コンソーシアム』設立に向けての共同提案」をまとめました。もとより「地域研究コンソーシアム」は呼びかけ機関のみが参加して構築できるものではありません。様々な視点から地域に立脚した研究を志す多くの研究者や研究機関、教育機関のフォーラムとして機能することを目指して、現在、構想の実現に向けて努力をしているところです。
今回の設立準備ワークショップは、その一環として「新しい地域研究とは何か」を問うことを目的に企画しました。また合わせて「地域研究コンソーシアム」構築に向けた設立準備委員会を設立したいと考えています。ぜひ、議論にご参加いただきたく、ご案内申し上げます。
呼びかけ機関
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北海道大
学スラブ研究センター 東北大学東北アジア研究センター 東京大学東洋文化研究所 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 京都大学東南アジア研究センター 国立民族学博物館地域研究企画交流センター |
日時:2004年1月9日 場所:学士会館320室 | |||
13: 30−13:40 | 本ワークショップの趣旨について
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押川文子(国立民族学博物館・地域研究企画交流センター)
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総合司会:臼杵陽(コンソーシアムWG) |
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共同座長:岩下明裕、帯谷知可、河野泰之、黒
木英充(コンソーシアムWG) |
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13: 40−14:40 | §
1:地域ユニットをどう捉えるか?:
実体、重層、関係性
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「地域」の特異性を論じる単位とされてきた
「東南アジア」「アフリカ」「スラブ」などの地域単位は、政治的歴史的産物でもある。近年盛んな、地域を跨ぐ
境界域での調査研究や、移動あるいは地域間関係に着目した研究は、従来所与とされてきた「地域」のとらえ方に一石を投じている。新しい地域研究は「地域」をどのように再構築していくのだろうか。それによってどのような新しい発見があるだろうか。 【話題提供】家田修(北海道大学スラブ研究センター) 市川光雄(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科) 木畑洋一(東京大学大学院総合文化研究科) |
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14: 40−15:40 | §2:地域間比較の潜在力とは?: 地域特異性と普遍性 | ||
地域研究者は自らが研究対象とする地域に拘泥する。この執着が地域研究を深める原動力であることは間違いない。しかし一方で、地域研究者は地域間比較のもつ可能性に目を背け、ひたすら自らが対象とする地域に埋没しがちである。地域間比較は、対象地域を相対的に眺める機会を与えてくれるだけでなく、地域特異性と普遍性の相互照射を通じて問題関心を深化させてもくれる。地域研究の立場から地域間比較の潜在力を世に問うことができるだろうか。 【話題提供】田中耕司(京都大学東南アジア研究センター) 加藤博(一橋大学経済学研究科) 飯塚正人(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所) |
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15: 50−16:50 | §
3:地域研究はディシプリンか?:「地域
学」と「場」の間
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既成の学問体系へのアンチテーゼとしての役回りを終えた地域研究は、新しい学際的研究の創生へと歩みはじめている。しかし、ディシプリンとの緊張関係のもとで成長してきた地域研究は、はたしてディシプリンに成りうるのだろうか?地域研究がディシプリンになることは、本源的な自己撞着を招くことにならないか?地域研究が学問分野として通世代的な再生産をおこなうことは可能だろうか。 【話題提供】杉島敬志(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科) 宮崎恒二(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所) 宇山智彦(北海道大学スラブ研究センター) |
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16: 50−17:50 | §4:地域とどう関わるか?:実践とポジショニング | ||
現地へ出かけ、情報を収集し、帰国してそれを報告にまとめる、という過程で、地域研究者が研究対象地域の人々のみならず、様々な人々や機関と接する機会は益々増えている。「地域」はもはや単なる情報源ではない。他所者としての研究者は、今後、「地域」にどのように関与していくことができるのか。そしてそれは地域研究に何をもたらすのだろうか? 【話題提供】阿部健一(国立民族学博物館地域研究企画交流センター) 村井吉敬(上智大学外国語学部) 酒井啓子(日本貿易振興機構アジア経済研究所) |
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18: 00−19:00 | 総
括討論および地域研究コンソーシアムの構築にむけた提言
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座長:家田修、押川文子、田中耕司、宮崎恒二 |
「人間の安全保障」は最近10年間に急速に普及した概念です。背景には、冷戦後いよいよ激化する世界各地の内戦や地域紛争、政治的暴力の横溢に対する人々の危機感・焦燥感があります。そして、これまでのように国家暴力装置を強化してフル稼働させるだけでは、何ら解決にならないことへの直感的理解があります。また環境問題や人口問題の急速な進行に対する人々の漠とした不安も指摘できるでしょう。地球社会の安定的持続可能性、人間が人間らしく生きていけることに対する根本的な疑念が生じているのです。
こうしたなかで「人間の安全保障」に関する学的な取り組みは様々に展開されてきました。国際政治学は国家間の安全保障に代わる新たな概念を創り出そうと努力してきましたし、NGOの活動を「人間の安全保障」に関わる市民社会の営みとして位置づけ、理論化する努力もなされてきました。
しかし、人間の安全が脅かされる諸要因や紛争の現実の様態などを、世界各地の現地の社会的・文化的文脈の上に位置づけ、総合的に考究する営みは、これまで組織的には展開されてこなかった、と言わざるをえません。私たちは今、この「地域研究」を通じて、「人間の安全保障」を新たな学として構築する一歩を踏み出そうとしています。個人の生活レベルからグローバルな政治レベルまで、無限の多様性と広がりのなかで「人間の安全保障」をとらえ直す必要があるのです。
今回のシンポジウムは、地域研究は「人間の安全保障」にいかに取り組むべきか、地域研究を通じて「人間の安全保障」のなかにどのような新しい問題が発見できるのか、それはどのように解決できるのか、という見通しを得るために企画されました。
日時:2004年1月10日(土)10:00
-17:00 場所:霞ヶ関ビル・プラザホール |
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10:00−10:20 | 挨
拶と趣旨説明
黒木英充(東京外国語大学AA研) |
第1部:地域研究は「人間の安全保障」をどうとらえるか | |
10:20−11:00 | [1]
フィールドにおける「人間の安全保障」
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速水洋子(京都大学東南アジア研)
幡谷則子(上智大学外国語学部) |
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11:00−11:40 | [2]
マルチ・ディシプリンと「人間の安全保障」
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松里公孝(北海道大学スラブ研)
松林公蔵(京都大学東南アジア研) |
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11:50−12:30 | [3]
地域の多重性と「人間の安全保障」
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帯谷知可(国立民族学博物館地域研)
島田周平(京都大学大学院AA地域研究研究科) |
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12:30−13:10 |
[4]地域研究における「介入」と「人間の安全保障」
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臼杵陽(国立民族学博物館地域研)
古矢旬(北海道大学大学院法学研究 科) |
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第2部:イラク戦争後の世界における「人間の安全保障」
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14:10−15:10 | 講演1 ヨハン・ガルトゥング(平和学者) 通訳:西村文子 |
15:10−15:50 | 講演2 池澤夏樹(作家) |
16:00−17:00 | 総合討論 |