愉快なテーマをめぐる退屈な考察

  ボリス・ラーニン(ロシア教育アカデミー教育情報研究所/センター外国人研究員として滞在中)

筆者 望月哲男氏と

 人間にまつわるあまたの謎のなかで、とりわけ私が興味を覚えるのは、機知に富む人の魅力という謎である。なぜ人は笑うのだろうか? なぜいつも権力は俗人の「笑い」を恐れるのだろうか? なぜいつも嘲笑より皮肉のほうが、相手にとってこたえるのだろうか? 人が「不真面目」な振る舞いをしても、その意図が不真面目だとは限らない。そしてもう一つ私が興味を覚えるのは、なぜコメディーはいつも低級なジャンルとみなされるのかということだ。
 私は20世紀ロシア文化を研究しながら、これらの問いに答えようと努力している。このテーマに私を導いたのは、英国の同僚で友人の、デーヴィッド・ギレスピ氏である。彼とはもう7年間も緊密に協力し合っている(Eメールなしでは不可能なことだ)。彼の示唆はいつもとても的を射ている。また論文を書くに際しては、日本の同僚や友人達にも感謝したいと思う。彼らも優れた学者であると同時に、卓越したユーモアのセンスの持ち主なのだ。
 札幌に滞在中の外国人研究員の方々(ヒッキー氏、ルキッチ氏、ラトランド氏、グレチコ氏)との恒常的な接触は、私に莫大な利益をもたらしている。実は私は彼らより少しだけ運がいいのだ。私には二人のホスト・プロフェッサーがいる。熟練した文学者で批評家の望月氏、そしてロシア・フォークロアの若き研究者、塚崎今日子さんである(彼女がそのうち教授になることは請け合いだ)。
 センターのすばらしい図書室はさまざまな人文科学研究にうってつけの場所だ。この一年が私の人生でもっとも実り多い学問研究の年になるだろうと期待している。


(ロシア語から望月訳)


スラブ研究センターニュース No84 目次