スラブ研究センターニュース 季刊 2009 年秋号 No.119 index
グローバル COE(Global Center of Excellence; GCOE)とは、我が 国の大学院の教育・研究機能の強 化を目的とした文部科学省の補助 金事業です。2009年6月、岩下明裕・ スラブ研究センター長をリーダー に据えた北大の人文・社会系グルー プが組織する GCOEプログラム「境 界研究の拠点形成:スラブ・ユー ラシアの世界」が採択され、3ヵ 月間の準備期間を経て10月に正式 スタートとなりました。
拠点開設式での佐伯総長のあいさつ
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本プログラムは、今日、ユーラ シア各地で生じている境界をめぐ る対立・紛争を国境問題に限らず、文化摩擦といった表象からも考察し、境界問題を読み解 くための新しい研究領域・拠点を確立すること、さらにこの地域に境界研究ネットワークを 立ち上げて、世界の境界研究コミュニティの一角を占めることを目的としています。12月19 日に予定される第一回GCOEシンポジウムでは、「世界のボーダースタディーズとの邂逅」 と題し、代表的コミュニティである IBRU(The International Boundaries Research Unit)、 ABS(the Association for Borderlands Studies)、BRIT(Border Regions In Transition)から 代表者を招く予定です。
また、本 GCOEプログラムは、社会還元を一つの柱としており、セミナー主催・共催に加え、 博物館展示とWebページも新たな還元の場としています。博物館展示では、北海道大学総合 博物館の二階には展示スペースが設けられ、第一期展示「ユーラシア国境の旅」が開催中で す。スラブ研究センターがこれまで蓄積してきたユーラシアの国境地域にかかわる歴史と現 況がパネルおよびPCディスプレイを通じて展示されています。国境線が描き込まれていな い地球儀(直径1m)は、山脈の高さのみならず、海溝の深さも再現されており、新聞各紙、テレビ各局から取り上げられ、GCOEのシンボルとして多くの観 覧者を引きつけています。なお、第2期展示は、根室市歴史と自然の資料館からお借りする国境標注と海底ケーブルの実物展示をメインに据え、「知られざる北 の国境」をテーマに本年12月19日から公開予定です。
GCOE地球儀
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博物館展示と連動した土曜市民セミナー「知られざる北の国境」(全5回)も開催しており、10月3日には満席の聴衆のもと、第一回講演「ボーダースタ ディーズと『北の国境』」(岩下明裕)がおこなわれました。国境に関する市民の関心度は高く、GCOEセミナー「北朝鮮をとりまく境界線」(10月15日 開催)では、センター内大会議室のフルハウスを記録しました。しかし、展示への反応やセミナー会場の人数から判断する限り、市民の関心は専ら「国境線」 「北方領土問題」といったハードな境界問題にとどまっており、移民、文化、といった境界線がはっきりしない問題に対する事象への反応は鈍いきらいがありま す。より広い境界問題へ如何にして興味を喚起できるかが、社会還元をおこなう場合の課題と思われます。
なお、これら博物館展示やセミナー情報は、境界研究HP(URL www.borderstudies.jp)で逐次告知していきます。皆様方のアクセスと同時に、博物館展示、ホームページ用のコンテンツ提供も広くお待 ちしております。著作権の「壁」は、東西ドイツの境界をなしていた「ベルリンの壁」の如くコンテンツ制作者の前に立ちはだかっているため、担当者は日々苦 悩しており、皆様の協力をつとにお願いする次第です。