スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年夏号 No.114 index
5 月22 日、G8 サミットに向け た企画の一環として、「環境が結ぶ 隣国:ロシア青年使節団との対話」 が北大学術交流会館において開催 されました。これは、日露青年交 流委員会が日本に招待したロシア の青年エリート(政治家、ジャー ナリスト、極東地方指導者など) 約50 名と共に日本の環境研究の最 先端の成果を聞くという、日露青 年交流委員会・北大共催の企画で した。
会場のようす
|
北大の江淵直人教授が「オホー ツク海の環境変動」について、東 北大の斉藤元也教授が「東北地方における複合生態フィールド科学の構築」について、琉球 大の中村將教授が「日本の亜熱帯沿岸域の環境と動物」について報告し、その後、日本語・ ロシア語を交えた討論に移りました。特にロシア側から活発な質問があり、50 分の予定だっ た討論が1 時間以上になりました。特に関心を引いたのは亜熱帯の環境問題を扱った中村報 告で、珊瑚礁保護の具体的な取り組みやその報道のされ方(多くの日本人はこの問題を知っ ているのか?)について質問がありました。中村教授は、環境の他に現在おこなっている魚 の性転換の研究について話をし、「魚だけでなく人間などにも応用できるか」との珍質問も出 ました。江淵報告に対しても、オホーツクの環境の将来予測を尋ねる質問が出ました。
外務省の飯島泰雅氏が、「温暖化はロシアにとって悪くない、たとえばロシアの農業が盛ん になる、寒いところに住めるようになるといった考えがロシア人の中にはあるが、どうか」 という挑発的な質問をしました。江渕教授は、短期的にはそうかもしれないが、長期的には そうではないだろうと回答しました。飯島氏の質問は狙い通りロシア側を刺激し、「環境問題 は地球全体の問題だ」との発言が2人から相次いでなされ、会場(ロシア側)から拍手が起きました。サミットに関連して日本側の 環境面での取り組みを尋ねる質問もあり、 ロシア人参加者の環境に対する関心は大 きいと感じられました。
質問をするロシア側の参加者
|
捕鯨をどう考えるかとの質問があり、 司会を務められた北大の上田宏教授が、 数を把握するための調査捕鯨であること、 日本の食文化であること、昔は欧米も油 を取るために捕鯨をしていたことなどを 指摘しました。
なお、この企画と夕方の懇親会との間 には、ロシア側を数グループに分けた小 樽・札幌のエクスカーションがおこなわ れ、スラブ研究センターの若手研究者がガイドを務めました。総じて雰囲気は友好的で、懇 親会でも、この会議を含めて日本側のhospitality に感謝する発言が相次ぎました。後日、外 務省のロシア交流室よりスラブ研究センターに丁寧な礼状が届きました。