スラブ研究センターニュース 季刊 2007年秋号 No.111 index
21 世紀COE プログラムでは5年間の研究活動の日本語による集約として『講座スラブ・ユー ラシア学』を刊行いたします。三巻本のシリーズで第一巻が来年1月24 ~ 26 日の総括シン ポジウムに合わせて出版され、以後、一月に一巻の順に刊行され、来年度の新学期には三巻 がそろうことになります。出版するのは講談社です。
この講座では、従来の「ソ連東欧研究」あるいは「移行研究」という研究のあり方を超え て、スラブ・ユーラシアを地域研究としてどのように分析するのかという方法論が具体的に 提示されています。つまり専門や教養としてこの地域を学ぶための教科書そして入門書とし て役立つことが刊行の第一の狙いです。しかし本講座は地域研究の書である以上、方法論の 提示といえども現場からの発想、地域からの語りかけという地域研究の基本を外していませ ん。従って、最新の研究書としても十二分に楽しんでいただける内容になっています。
この講座の出版は刊行の方法としても新方式を採用しています。つまり本講座は商業出版 ではありますが、北海道大学が出版社と契約を締結し、事実上の共同出版という形式をとっ ているのです。具体的な契約のあり方にご興味をお持ちの方はセンターまでお問い合わせ下 さい。ともあれ共同出版によって合理的な価格で多くの読者に読んでいただくことが可能に なりました。
皆様にもお手に取っていただき、いたらぬ点などご叱正いただければ幸いです。
第一巻「開かれた地域研究へ:中域圏と地球
化」(編集担当:家田修) |
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序
章 |
スラブ・ユーラシア学とは何か
(家田修) |
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第一部 |
中域圏とは何か |
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第1章 |
中域圏:地球化時代の新しい地域研究(家田修) |
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第2章 |
政治研究のツールとしての中域圏概念(松里公孝) |
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第二部 |
地域はどう自らを構築するか |
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第3章 |
戦略としての地域:世界戦争と東欧認識をめぐって(林忠行) |
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第4章 |
地域概念の構築性:中央ヨーロッパ論の構造(篠原琢) |
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第5章 |
地域研究と言語学:Balkan
の運用からバルカンを探る(三谷恵子) |
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第6章 |
歴史の中のコーカサス中域圏:革新される自己意識と閉ざされる自己意識
(前田弘毅) |
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第三部 |
地球化とどう向き合うか |
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第7章 |
ユーラシアとアジアの様々な三角形:国境政治学試論(岩下明裕) |
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第8章 |
地球化と地域経済統合:CIS を中心として(田畑伸一郎) |
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第9章 |
スラブ・ユーラシアにおける農業政策と地球化:WTO
加盟をめぐって(山村理人) |
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第二巻 「地域認識論:多民族空間の構造と表
象」(編集担当:宇山智彦) |
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序
章 |
地域認識の方法:オリエンタリ
ズム論を超えて(宇山智彦) |
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第一部 |
史料・芸術から見る地域 |
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第1章 |
中央アジアとイラン:史料に見る地域認識(木村暁) |
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第2章 |
ロシア的風景の発見: 風景画のトポス (福間加容) |
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第3章 |
現代中欧文学と地域アイデンティティ:<中(東)欧意識>の再検討の試
み(沼野充義) |
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第二部 |
民族/民俗文化と地域 |
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第4章 |
北ロシアのフォークロア:シュクリンの異称から見る多民族文化の接触
(塚崎今日子) |
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第5章 |
生業文化類型と地域表象:シベリア地域研究における人類学の方法と視座
(高倉浩樹) |
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第6章 |
カルムイク人とブリヤート人の民族意識:「モンゴル」認識と「独自の
道」(荒井幸康・井上岳彦) |
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第三部 |
国家・世界・地域 |
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第7章 | 露清関係とカザフ草原:帝国の支配と外交の中の地域認識(野田仁) |
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第8章 |
ロシア帝国のムスリムにとっての制度・地域・越境:タタール人の場合
(長縄宣博) |
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第9章 |
ヨーロッパ人になろう!:「祖国」としてのエストニアと地域認識(小森
宏美) |
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第三巻「ユーラシア―帝国の大陸」(編集担
当:松里公孝) |
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序
章 |
帝国と心象地理、そして跨境史
(松里公孝) |
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第一部 |
帝国論 |
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第1章 |
境界地域から世界帝国へ:多元的複合国家としての清、ブリテン、ロシア
(松里公孝) |
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第2章 |
ベッサラビアからみるロシア帝国研究と跨境論(志田恭子) |
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第3章 |
帝国と詩人:「ソ連多民族文化」とダゲスタンのアヴァル語作家ラスル・
ガムザトフ(中村唯史) |
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第二部 |
空間表象(心象地理) |
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第4章 |
ロシアの空間イメージによせて(望月哲男) |
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第5章 |
現代ロシアの歴史改変小説における帝国イメージについて(越野剛) |
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第6章 |
内なる境界:ロシアユダヤ人の地理空間(高尾千津子) |
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第三部 |
跨境史 |
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第7章 |
ベラルーシ国民史におけるユニエイト教会の逆説(服部倫卓) |
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第8章 |
ハルビンのロシア人社会(中嶋毅) |
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第9章 |
華商紀鳳台:ロシア帝国における「跨境者」の一例(麻田雅文) |