何よりもまず、スラブ研究センターが50周年の記念すべき日を迎えましたことに、心からお祝い申し上げます。それからまた、このような栄誉ある席に お招きいただき、ありがとうございます。実はいまご紹介いただきましたように、私はここ3、4年、大学の管理職に巻き込まれておりまして、勉強らしい勉強 をほとんどやっておりません。したがって、何か学問的なことを申し上げるのはとても無理でございますので、マネジメントの観点から一言祝辞を述べさせてい ただきたいと思います。
1942年生まれ
一橋大学経済研究所教授・センター運営委員 2002-04年一橋大学経済研究所所長 2004年~ 一橋大学理事・副学長 専門は経済体制論、ロシア・東欧経済 |
私は30年ほど大学に勤めておりますけれども、この3、4年になってはじめて実感したことがございます。それは大学にとって、あるいは部局にとっ て、1年という時の流れがいかに重いものかということです。例えば年末の御用納めの日になりますと、この1年ともかく大学、あるいは、私は経済研究所にお りますので、研究所が無事に済んでよかった、そしてまたこういういいこともあったし、ああいういいこともあったというふうに振り返りまして、教職員の1年 間の努力というものに本当に感謝する気持ちが湧いてきます。これはどこの大学でも、どこの部局でも同じだと思うわけですけれど、この一年一年という時間に は、そうした努力とその成果というものがいっぱい詰め込まれていると私は思うわけです。ところがスラブ研究センターは、そういう一年一年を実に50年も積 み重ねてこられました。私は50年という歴史の重さというものをひしひしと実感いたしますので、この歴史を作ってこられた、毎日毎日の生活の中で歴史を 作ってこられたスラブ研究センターの教職員の方々に心から敬意を表したいと思います。
先ほど原教授が「二つの節目」ということを申されました。つまり、学内共同利用施設への改組と、全国共同利用施設への改組という二つの改組ということを申 されました。この二つの改組というのは、スラブ研究センターの発展にとってどちらもきわめて大事なもので、その改組を推進された時のセンター長と関係者の 方々には本当にご苦労の多かったことと思います。しかし、国立大学法人化後の新しい状況を見ながら申し上げると、その全国共同利用施設への改組というのは 実に先見の明のある快挙であったと思わざるを得ません。と申しますのは、法人化後も文部科学省が責任を持って、面倒を見てくださる研究組織というのは、主 として全国共同利用の組織だけになっていくという心配があるからであります。「心配」と申しますのは、私は一研究所に勤めておりますが、それは全国共同利 用の研究所ではありませんので、そういう心配を持っているわけです。スラブ研究センターはまだセンターにはとどまっていますけれども、その点で大変強いポ ジションを持っておられる。それは全国共同利用施設たる内実を持っていない私どもの研究所のようなところからしてみると、とても及ばないような大きな利点 でございます。
それからスラブ研究センターはもう一つの強みを持っていると思います。それはセンターが北海道大学の中にあるということです。言い換えますと、地の利を 持っているということだと思います。北海道大学は地域社会に貢献するさまざまな活動を繰り広げられているとうかがっておりますけれども、スラブ研究セン ターはそうした活動の一端を立派に担っていると思います。北海道はロシアに隣接しているわけですから、北海道にとってロシア社会の正確な認識を持つという ことはきわめて大事なことでございます。スラブ研究センターは、ロシアを含むスラブ・ユーラシアを研究する機関として、その活動を通じて地域社会に貢献し ていくことができるという強みを持っているわけです。つまり、地域社会への貢献のユニークな ― この言葉は慎重に使わなければならないと伊東先生のお話を聴いていて思いましたが ―、ユニークな可能性が開かれているという点は、今後のスラブ研究センターの発展の礎になると思います。
ですから、以上に申し上げたことをまとめますと、スラブ研究センターはスラブ・ユーラシア研究の分野における全国的な知の集積の場として、一方では全国 的・国際的な共同研究の中核拠点の役割、他方では地域社会に貢献していく役割、この2つの役割をいわば車の両輪として、これから先の新しい50年を一年一 年積み重ねていくことによってダイナミックに発展していけば、すばらしい組織になっていくと確信する次第でございます。
最後になりますが、私もロシア東欧経済の研究者の一員として、スラブ研究センターのサービスの提供にはつねづね感謝しております。この機会にこの感謝の気 持ちを述べさせていただきたいと思います。それと同時にセンターの今後の発展を祈って、私の祝辞とさせていただきたいと思います。どうもありがとうござい ました。