スラブ研究センターニュース 季刊 2005 年秋号 No.103
『軍事論集Военный
сборник』は、1858年に創刊されたロシア陸軍省の月刊雑誌です。その発刊に際しては、当時カフカス軍参謀長で、その後1861年から1881年
まで陸軍大臣を務めたドミトリー・ミリューチン(1816-1912)のイニシャチブがありました。帝政ロシア政府機関の定期刊行物によくあるように、当
初、内容は公式部 официальная часть と非公式部 неофициальная
частьに分れ、公式部には、軍政、軍令関係の布告類を掲載し、非公式部には、軍事関係の論文や回想などの記事を収めていました。その後、1869年に
なって『ロシアの傷病兵』紙を同じ編集部で編集することとなり、公式部は『ロシアの傷病兵 Русский инвалид』に引き継がれました。
同誌の編集に長く携わったФ.А.Макшеевは、19世紀初以来のロシアの軍事関係雑誌および同誌の成り立ちと発展を回顧する文章をその1908年
4、5、6、11月号および1916年6月号以降に連載しましたが、残念ながら、1871年までの分で中絶しています。
スラブ研究センター図書室は、同誌の創刊より1917年1月号までを収めた、オランダIDC社の製作したマイクロフィッシュ4201枚を購入しました。セ
ンター図書室は、同誌に先立つ1848年に創刊されたロシア海軍の雑誌『海事論集 Морской
сборник』について、マイクロフィッシュをすでに所蔵しますが、『軍事論集Военный
сборник』が加わったことで、帝政ロシア軍事史を辿る雑誌の両輪を得たと言えるでしょう。
中村泰三氏は、1933年生まれ。ロシア・東欧の地理学を専門とされ、大阪市立大学において長く活躍されてきました、わが国におけるこの分野の数少
ない専門家のひとりです。本センターにおいても、1992-1993年度に客員教授を務められました。現職は、京都女子大学教授です。
昨年、センターの原暉之教授を通じて、所蔵資料の寄贈についてのご相談をいただきました。リストをいただいて調べましたところ、全部で2,300点を超え
る資料の大部分はロシア語資料ですが、一部、ポーランド語、ブルガリア語など東欧諸国語のものも含まれること、分野的には、大きく分けて、経済学関係のも
のと地理関係のものがあり、そのうち、前者は半分以上北大既存の資料と重複するものの、後者については重複しない資料が相当あることが判りました。ロシ
ア・東欧の地理関係のコレクションは、全国的に見ても、九州大学の三上文庫、北大附属図書館のギブソン文庫等がありますが、まだまだ手薄な領域のため、北
大に収蔵することは意義が大きいということで、附属図書館に相談申し上げましたところ、重複部分を除いた上で、個人文庫として扱うことができるということ
で理解をいただくことができました。本年7月に資料を受贈し、現在、附属図書館において登録および目録の作業が進行中です。最終的な受入数量は確定してい
ませんが、1,600点程度と見込まれます。
本資料は、2005年度末前後には整理が完了し、附属図書館本館書庫西4階に排架されて利用可能となる見込みです。
2005年7月から2005年9月までの3ヵ月間における、センターのホームページへのアクセス数(但し、gif・jpg等の画像形式ファイル を除く)を統計しました。
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全アクセス数 (1日平均) |
うち、 邦語表紙 アクセス数 (1日平均) |
うち、 英語表紙 アクセス数 (1日平均) |
国内からの アクセス数 (%) |
国外からの アクセス数 (%) |
不明 (%) |
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7月 | 267,760(8,637) | 13,247(427) | 2,449(79) | 98,419(37%) | 146,772(55%) | 22,569(8%) |
8月 | 240,009(7,742) | 12,049(389) | 2,689(87) | 72,162(30%) | 141,547(59%) | 26,300(11%) |
9月 | 314,744(10,491) | 12,607(420) | 2,768(92) | 72,133(23%) | 163,586(52%) | 79,025(25%) |
和文のレフェリー制学術雑誌『スラヴ研究』第53号への投稿は8月末で締め切られました。17件の応募があり、2006年4月の発行を目指して現在 審査をおこなっています。
第23号はレフェリーによる審査がほぼ終わり、現在編集作業中です。来春の刊行をめざしています。
2004年1月の国際シンポジウム『旧社会主義諸国に出現しつつある中域圏:歴史は甦りつつあるのか、それとも創作されているのか』に提出された
ペーパー
をもとにした論文集が出版されました。これは中域圏論を体系的に論じた最初の論文集であり、日本、ロシア、米国のほか、ウクライナ、エストニア、英国、
ニュージーランド、ベラルーシ、ポーランド、リトアニア、そしてアブハジアの研究者が寄稿し、18章からなる若干厚めの本となりました。先日、21世紀
COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築:中域圏と地球化」は、学術審議会の中間評価でAという高い評価を受けましたが、この論文集の刊行により、
本プログラムはますます国際的に認知されるでしょう。なお、本書の内容は、インターネットからもダウンロードすることができます
(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/coe21/publish/no7_ses/contents.html)。
収録論文は以下の通り。
1. |
REGIONAL IDENTITIES AND MESO-MEGA AREA DYNAMICS IN SLAVIC EURASIA: FOCUSED ON EASTERN EUROPE |
Osamu Ieda
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2. |
ON SAILS AND GALES, AND SHIPS
DRIVING IN VARIOUS DIRECTIONS: POST-SOVIET UKRAINE AS A TEST CASE FOR
THE MESO-AREA CONCEPT |
Yaroslav
Hrytsak
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3. |
THE STUDY OF MESO- AND MEGA-AREA DYNAMICS: METHODOLOGICAL AND EMPIRICAL CONSIDERATIONS |
Vello Pettai
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4. |
TATARS AS MESO-NATION |
Dmitry
Gorenburg
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5. |
MOLDOVA AND THE POLITICS OF MESO-AREAS |
Stephen White
and Ian McAllister
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6. |
UKRAINIAN GAS TRADERS, DOMESTIC CLANS AND RUSSIAN FACTORS: A TEST CASE FOR MESO-MEGA AREA DYNAMICS |
Shinkichi
Fujimori
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7. |
WILL THE UKRAINIAN PARLIAMENT COUNTERBALANCE SUPERPRESIDENTIALISM? |
Oleksandr
Syniookyi
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8. |
PECULIARITIES OF THE INTEGRATION PROCESS BETWEEN BELARUS AND THE RUSSIAN FEDERATION: ECONOMIC AND POLITICAL ASPECTS |
Andrei
Lobatch
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9. |
THE REPRESENTATION OF THE BELARUSIAN LANGUAGE IN CONTEMPORARY BELARUSIAN LITERATURE |
Go Koshino
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10. |
DAGESTAN’S APPROACH TO THE ISLAMIC MEGA-AREA? THE POTENTIALS AND LIMITS OF JIHADISM |
Dmitry
Makarov
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11. |
ALIEN BUT LOYAL: REASONS FOR THE “UNSTABLE STABILITY” OF DAGESTAN, AN OUTPOST OF SLAVIC EURASIA |
Magomed-Rasul
Ibragimov and Kimitaka
Matsuzato
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12. |
BETWEEN IMPERIAL TEMPTATION AND ANTI-IMPERIAL FUNCTION IN EASTERN EUROPEAN POLITICS: POLAND FROM THE EIGHTEENTH TO TWENTY-FIRST CENTURY |
Andrzej Nowak
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13. |
THE MOST EUROPEAN SCIENCE IN RUSSIA: DEFINING THE EMPIRE ANTHROPOLOGICALLY |
Marina
Mogilner
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14. |
FROM ETHNOCENTRIC TO CIVIC HISTORY: CHANGES IN CONTEMPORARY LITHUANIAN HISTORICAL STUDIES |
Darius
Staliūnas
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15. |
EMPIRE OR POST-EMPIRE? THE CONCEPT OF “LONG CENTURY” AND THE CONSEQUENCES OF GLOBALIZATION |
Norihisa
Yamashita
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16. |
ABKHAZIA UNDER THE CONDITIONS OF THE DIVISION OF THE WORLD |
Stanislav
Lakoba
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17. |
IS IT EASY TO GLOBALIZE THE WORLD? THE EXPANSION OF THE SCHENGEN TERRITORY AND FREEDOM OF MOVEMENT IN A WIDER EUROPE |
Vitaly
Merkushev
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18. |
OPPORTUNITIES AND LIMITS OF SELF-CREATION AND IDENTITY POLITICS: TATARSTAN’S PARADIPLOMATIC PROJECT |
Gulnaz
Sharafutdinova
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科学研究費補助金「東欧・中央ユーラシアの近代とネーション」(林忠行代表)以来続けられてきた、日本とウクライナの歴史家の共同研究が論文集とし て結実しました。日本からは、松村岳志氏、橋本伸也氏、そして私が寄稿しました。また、本論文集は、CIS諸国の読者が容易に入手できるように、モスクワ のロスペン出版社との共同出版となりました。なお、本書の内容は、インターネットからもダウンロードすることができます(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/coe21/publish/no8_ses/contents.html)。 収録論文は以下の通り。
ДЕМАГНАТАРИЗАЦИЯ ЛАТИФУНДИЙ НА ПРАВОБЕРЕЖНОЙ УКРАИНЕ (ПЕРВАЯ ТРЕТЬ XIX в.): УМАНСКИЕ ИМЕНИЯ ПОТОЦКИХ | |
Игорь КРИВОШЕЯ
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ДЕКЛАССАЦИЯ МЕЛКОЙ ШЛЯХТЫ ПРАВОБЕРЕЖНОЙ УКРАИНЫ
В XIX в. НА ПРИМЕРЕ НЕСКОЛЬКИХ ГЕНЕАЛОГИЧЕСКИХ ЛИНИЙ РОДА НЕЗАБИТОВЦКИХ |
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Сергей ЛЫСЕНКО
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ТРАНСФОРМАЦИЯ ДЕРЕВНИ НА ПРАВОБЕРЕЖНОЙ УКРАИНЕ НАКАНУНЕ ОСВОБОЖДЕНИЯ КРЕСТЬЯН И Роль ИНВЕНТАРНЫХ ПРАВИЛ | |
МАЦУМУРА Такэси
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ХОЗЯЙСТВЕННАЯ ДЕЯТЕЛЬНОСТЬ ИНОСТРАННЫХ
КОЛОНИСТОВ ВОЛЫНСКОЙ ГУБЕРНИИ ( ВТОРАЯ ПОЛ. XIX - НАЧАЛО XX вв.) |
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Валентина НАДОЛЬСКАЯ
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УЧЕБНАЯ ПОЛИТИКА РОССИЙСКОЙ ИМПЕРИИ В ЗАПАДНЫХ ГУБЕРНИЯХ И « ПОЛЬСКИЙ ВОПРОС» ( КОНЕЦ XVIII в. – ПЕРВАЯ ПОЛОВИНА XIX в.) | |
ХАСИМОТО Нобуя
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ИЗ КОМИССАРОВ АНТИПОЛОНИЗМА В ПРОСВЕТИТЕЛЕЙ ДЕРЕВНИ: МИРОВЫЕ ПОСРЕДНИКИ НА ПРАВОБЕРЕЖНОЙ УКРАИНЕ (1861-1917гг.) | |
МАЦУЗАТО Кимитака
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『現代文芸研究のフロンティア(VII)』が21世紀COE研究報告集
No.9として、9月付けで発行されました。主としてロシアの文芸における時空間イ
メージに関する共同研究の成果を集めたもので、「文芸と視覚」、「文芸と政治」、「文芸と異文化接触」といった問題の枠組みを意識しています。大学院生を
含む若い研究者の方々の仕事も掲載されていますので、ご批評いただければ幸いです。
なお本報告集の内容はセンターHPに掲載されており、また『現代ロシア文学データベース』 (http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/literature/literature-list.html)
にも収められています。目次は以下の通り。
作家の 絵と、対象について ―レーミゾフ、シュルレアリスム、カンディンスキイ― | |
小椋 彩
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Наука и оккультизм. Глаз, возрождающий мир, в
романе «Москва» А. Белого |
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Вакана Коно
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ソロー キンと絵画―小説『ロマン』と19世紀ロシア美術― | |
福間 加容・望月 哲男
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ナポレオン戦争と歴史小説 |
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越野 剛
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エマヌ イル・カザケーヴィチの戦争小説―戦後の「大祖国戦争」へのまなざし― | |
佐藤 亮太郎
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Ю.Ф.サマーリン『リガからの手紙』とオストゼイ問題―「ツァーリとの面談」を手がかりとして― | |
山本 健三
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第一次 大戦期のスラヴ主義―ベルジャーエフとモスクワのスラヴ派― | |
大須賀 史和
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アンドレイ・プラトーノフ『ジャン』におけるオリエンタリズムについて:問題提起 |
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古川 哲
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「ソビ エト語」の言説空間―1930 年代の大衆歌をめぐって― | |
高橋 健一郎
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プレドラグ・マトヴェイェーヴィチの《書簡集》について |
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阿部 賢一
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掘り起 こしから回顧へ— 最近のウリツカヤの創作をめぐって— | |
岩本 和久
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現代ロシ文学と麻薬 |
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岩本 和久
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2005年度 第7回 10月5日 |
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議 題 | 1.教 員の人事について |
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2.ロ シア科学アカデミー東洋研究所との交流協定について |
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3.そ の他 |
報告事項 | 1.教 員の海外渡航について |
2.そ の他 | |
2005年度 第8回 10月12日 |
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議 題 | 1.教 員の人事について |
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2.そ の他 |
報告事項 | 1.そ の他 |
一橋大学経済研究所の岩崎一郎氏の著作『中央アジア体制移行経済の制度分析:政府‐企業間関係の進化と経済成果』(東京大学出版会、2004年)に 対して、第6回NIRA大来政策研究賞が授与されました(http://www.nira.go.jp/newsj/info/ookita/ookita06.html)。 同書は岩崎氏の博士論文に基づくものであり、「選者講評」には、「規矩正しい実証分析」、「大変なエネルギーを注ぎ込んで検証した著作」という評価が述べ られています。
ニュース102号以降のセンター訪問者(道内を除く)は以下の通りです(敬称略)。
7月24日 |
東条碩
夫(音楽評論家)) |
8月23日 |
根村亮
(新潟工科大)、大須賀史和(神奈川大)、貝澤哉(早稲田大)、川名隆史(東京国際大)、北見諭(神戸市外国語大) |
8月29日 |
スウェ
イン(Nigel Swain)(リヴァプール大、英国) |
9月2日 |
松田邦
夫(国際金融情報センター) |
9月12日 |
ゴロデ ツキー(Vladimir Gorodetskii)(ノヴォシビルスク市長、ロシア)、ボルテンコ(Nadezhda Boltenko)(同市議会議長)、テレホフ(Nikolai Terekhov)(同市区長)、サンダコフ(Vladimir Sandakov)(同市国際部長)(以上、ノヴォシビルスク市長団一行) |
9月13日 |
斎藤久
美子(和歌山大) |
9月20日 |
ホロシ
ケヴィチ(Anna Khoroshkevich)(スラヴ学研究所、ロシア) |
9月21日 |
ファイ
ズラエフ(Alisher Fayzullaev)(世界経済外交大、ウズベキスタン)、梅木孝昭(武四郎の道研究会) |
9月29日 |
ヴル
シャンスキー(Peter Vršanský)(スロヴァキア共和国大使) |
10月5日 |
アウエ
ゾフ(Murat Auezov)(カザフスタン国立図書館)) |
10月8日 |
サヴェ
リエフ(Igor' Saveliev)(名古屋大)、荒武達朗(徳島大)、石川亮太(佐賀大)、神長英輔(日本学術振興会) |