「東欧の地域社会形成と拡大EUの相互的影響に関する研究」


  1. 研究組織
  2. 研究目的

1. 研究組織

研究代表者: 家田修(北海道大学スラブ研究センター教授) :研究全体の総括、経済分析、西欧・ハンガリー・ルーマニアの現地調査
研究分担者: 林忠行(スラブ研究センター教授): 政治分析の総括、議会・政党分析、チェコとスロヴァキアの現地調査
松里公孝(スラブ研究センター教授): 地方政治分析、ソ連継承欧州地域諸国の現地調査
月村太郎(神戸大学法学研究科教授): 地域間関係と国際関係の分析、バルカン地域での現地調査
仙石学(西南学院大学法学部助教授): 社会政策分析、ポーランドでの現地調査

2. 研究目的

本研究はEU東方拡大過程を東欧社会の側から検討し、併せて東方拡大がEUの内部編成 に与える影響について分析することを目的としている。とりわけ来年度から3カ年に わたってこの調査研究を行う意義は大きい。何故なら、EUは2000年末のニース会議 で2004年の第一次本加盟実施を打ち出し、現在、2002年末を期限として最終的な詰め の加盟交渉が行われているからである。

[第一の視点:地域] 本研究でまず重視される視点は地域(広域自治体ないしregion) であり、研究手法としても地域での現地調査を積み重ねる。地域の視点を重視する理 由は以下の三点である。

1) 欧州統合懐疑論: 国政レベルでの無条件的EU加盟支持論に対して、地域レベル ではEU懐疑論ないし西欧不信が深まっている。本研究ではその実情解明が目指される。

2) EUリージョン: EU加盟は地域の重要性を飛躍的に高める。本研究では加盟準備 過程及び加盟直後における地域の役割変容が多面的に明らかにされる。

3)地域間関係: 東欧内部の関係、そして東欧と西欧との関係においても、地域の役 割が急速に強化されている。本研究では地域関係と国際関係の相互性的実体が明かに される。

[第二の視点:社会統合論] 第二の視点は社会変容である。現在、東欧各国のEU加盟 交渉は主として法体系の整備と経済的な援助に焦点が絞られているが、EU自身が国家 間条約および協定の巨大な集積であり、また両欧間に大きな経済格差が存在する以上、 これは避けられないことである。しかしもともとEU法体系は西欧社会が歴史的に培っ てきた規範や秩序を基礎に作り上げられたものであり、西欧と異なった独自の社会発 展を遂げてきた東欧にそのまま移植すれば、大きな混乱をもたらさざるを得ない。つ まりEU加盟は単なる法制度の摺り合わせや経済格差の是正で済まされない問題であり、 社会変容と新たな社会統合を伴なわざるを得ない過程である。ところが現在、EU加盟 後の東欧社会については、予定調和的にしか論じられていない。本研究は地 域(region)さらには地域自治体レベルにおける様々な意志決定過程ないし合意形成過 程の再編成に焦点を当て、この社会変容の側面を分析することを目的としている。

[第三の視点:統合と分裂] 最後の視点はEU東方拡大がEUそのものを変容させるという欧州統合論再考である。EU が東欧を全体として抱え込んだ場合、EUの意志決定過程、共通農業政策、地域振興政 策において従来と全く異なる力関係が生まれると予想される。統合の拡大は分裂につ ながるという予測さえ叫ばれている。その一方でEUの統合力を維持するためのさらな る内部改革が急務だという声が高まっている。本研究はこれらの問題群について東欧 各国、および東欧内各地域がどう対応しようとしているのか、そしてそれがEU内部改 革にどう反作用を及ぼすのかを明らかにする。


スラブ研究センター