新学術領域研究第6回国際シンポジウム「近現代帝国の比較」開催される
宇山 智彦(SRC)
2012年1月19~20日に、センターの冬期シンポジウムを兼ねた新学術領域研究第
6 回国際シンポジウムComparing Modern Empires: Imperial Rule and Decolonization
in the Changing World
Order(近現代帝国の比較:世界秩序変動の中での帝国統治と脱植民地化)が、スラブ研究センター大会議室で開かれました。新学術領域研究はロシア、中国、インドを主な対象としたものではありますが、帝国比較のためにはさまざまな帝国を視野に入れる必要があること、帝国は帝国間および国民国家や小地域との関係性の中で機能してきたことから、今回のシンポジウムでは、日本、アメリカ、オスマン帝国、イラン、中央アジアに関する報告も入れました。
1日目は、ジェーン・バーバンク氏による、帝国が多様な社会をどのように統治し、近現
代にどのように変化したかに関する基調講演に始まり、帝国の統治技術、イデオロギー、相互認識・歴史認識などを議論しました。特に議論の焦点になったのは、帝国中央とは異質な社会を統治する際の仲介者・協力者の存在であり、また帝国の保守主義と近代化の関係も話題になりました。2日目は、帝国の崩壊とその遺産、脱植民地化に対する諸大国の態度、アメリカの帝国性や中国の再帝国化の可能性などを議論しました。戦後インドの経済発展が可能になったのが、イギリス帝国の遺産や外国の援助を巧みに活用したためか、帝国支配の悪影響を克服したためかについては、相異なる見方が披露されました。
全体として、多様な話題について非常に活発な議論が繰り広げられ、帝国研究の世界的な
発展と、その今日的な意義を、凝縮した形で感じ取ることができました。今回は、企画を担当した新学術領域研究第4班の班員がなるべく多く報告するという方針をとりましたが、日本人の報告の水準が高かったという評価を外国人ゲストの方々から戴けたのも嬉しいことでした。また、前日の1月18日には、プレシンポジウム・セミナーとしてセンター外国人研究員3人の報告会を開き、外国人研究員とシンポ参加者の交流を深めることもできました。
関連リンク:シンポジウム プログラム
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