ロシアにおける銀行の資金運用状況 (1992〜1998年初め)

-所在地別、設立母体別、規模別視点から-

Copyright (c) 2000 by the Slavic Research Center. All rights reserved.


  1. ロシアの銀行の設立母体別差異に着目した研究として、Андреев В. Российские банки: количество пере-ходит в качество? //Экономика и жизнь. 1994. 19. および Андреев В. Российские банки: большой —не значит лучший //Экономика и жизнь. 1994. 45.などがある。また規模別差異に着目した研究として Дмитриев М. Э. и др. Российские банки накануне финансовой стабилизации. Санкт-Петербург, 1996.などがある。
  2. 1988年の銀行改革以降ソ連において活動していた銀行は、中央銀行であるゴスバンク、ソ連対外経済銀行、ソ連工業・建設銀行、ソ連農工銀行、ソ連住宅・社会銀行、ソ連貯蓄銀行の6行であった。このうち株式会社化された後4者を分析で取り扱った。
  3. 経済地区は、経済的要因というよりむしろ地理的な要因で区画が定められた面が強いが、本稿では経済地区を主にモスクワとの差異を分析するために利用するに過ぎないことから、この分類は有効であると考える。
  4. 本稿では銀行を設立母体別、所在地別、規模別に分類して分析を行ったが、次第にモスクワに所在する50大銀行の比重が高まっている。例えば1994年7月の『経済と生活』紙のデータでは50大銀行のうちモスクワの銀行は29行であったのに対し、1998年1月の『フィナンシャル・イズベスチヤ』紙では38行にまで増大している。このため50大銀行の活動がモスクワの銀行の活動と重なり合う割合が高くなってしまっており、この意味で規模別活動の分析意義はやや薄らいでいることに留意しなければならない。
  5. ルーブルの対米ドルレートにおける目標相場圏が1995年に設定されるまでは、規模および収益の面から見て外貨取引が銀行の主要業務の一つであった(Букато В. и Львов Ю. Банки и банковские операции в России. Москва, 1996. С.127.)。
  6. 外貨のオープン・ポジションの金額には規制が加えられているが、中央銀行への報告時以外の銀行のオープン・ポジションの金額は、報告時の数値を上回っていたと考えられる。中央銀行への報告時に外貨のオープン・ポジションを減少させる手段としては、外貨建ての他銀行への貸出を減少させ、ルーブル建ての他銀行への貸出を増大させるという手段が取られた。こうしたことは他銀行への貸出においては返済期限が1週間未満のものが大半であったために可能であった(Дмитриев М. Э. и др. Российские банки... С.193-194.)。
  7. Бюллетень банковской статистики. 1997. 1. С.22; 1997. 12. С.19.
  8. 非銀行貸出には、企業への貸出のみならず中央・地方政府や証券会社への貸出も含まれる。
  9. Андреев В. Российские банки: большой.... С.7.
  10. Interfax, Financial Report, July 8, 1994, pp.20-21; Коммерсантъ-Daily. 19 октября 1995. С.15.
  11. 『経済と生活』紙では、資産総額の計算の際、資産および負債項目で、本支店勘定、予算および予算外基金の資金、投資財源、未収金および未払金、外貨の評価換えが重複している場合、その金額分が相殺されている。また資産総額より延滞利子は除外されている。他方、『フィナンシャル・イズベスチヤ』紙では、資産総額は、貸借対照表の「資産合計」の額である。このため資産総額は『フィナンシャル・イズベスチヤ』紙の方が大きくなる傾向にある。また『経済と生活』紙では、ソ連工業・建設銀行系およびソ連農工銀行系銀行の資産総額に占める非銀行貸出の割合が、非旧国有銀行の数値を上回っているが、『フィナンシャル・イズベスチヤ』紙では両者の数値の大小が逆転している。これは、『フィナンシャル・イズベスチヤ』紙の資産総額には、延滞利子や本支店勘定などが含まれており、その比重がソ連工業・建設銀行などで高かったことが影響していると思われる。
  12. Гостева Е. Время покупать филиалы //Сегодня. 2 октября 1997. С.7.・
  13. Коммерсантъ-Daily. 14 ноября 1995. С.5.
  14. Коммерсантъ-Daily. 18 ноября 1995.С.6-7.
  15. Бюллетень банковской статистики. 1998. 1. С.53. この統計には外貨建て長期(1年以上)貸出額が記載されていないものの、貸出残高に占める長期貸出の比率が低いことから、実際の非銀行貸出に占める外貨建て非銀行貸出の比率と大きく変わらないと考えられる。
  16. 本稿の分析期間とはやや異なるが、1998年の4月以前にはルーブル建ての非銀行貸出残高が外貨建て非銀行貸出残高を上回っていたが、ルーブル・レート下落予想が高まったことなどから、1998年5月以降、両者の比率が逆転した(Астапович А. и Сырмолотов Д. Российские банки в 1998 году: развитие системного кризиса //Вопросы экономики. 1999. 5. С.49.))。
  17. これらの銀行と関連の深い企業を確認する際には、 Интербридж. Коммерческие банки России 1994. を参照した。
  18. データは、Бюллетень банковской статистики. 1998. 5. С.103-104. および Российский статистический ежегодник. Москва, 1998. С.743-744. を参照した。またある年の経済地区別輸出額とその翌年初めの経済地区別外貨建て非銀行貸出残高の双方が利用可能なのは、1995年度輸出額と1996年初めにおける外貨建て非銀行貸出残高の組み合わせ、および1997年度輸出額と1998年4月初めにおける外貨建て非銀行貸出残高(1998年1月初めのデータは掲載されていない)の組み合わせのみであった。ただし1996年の外貨建て貸出残高のデータにおいては、ロシア貯蓄銀行による外貨建て貸出供与額が経済地区別貸出額に含まれていなかった(1998年4月のデータから当該貸出額が経済地区別貸出額に含まれるようになった)。このため分析には1997年度輸出額と1998年4月初めにおける外貨建て貸出残高のデータのみを利用した。
  19. Сажин А. и др. К тенденции развития системы коммерческих банков //Российский экономическийжурнал. 1995. 8. С.35.
  20. 大野成樹「ロシアにおける銀行の類型別資金運用状況(1992〜1998年初め)」『比較経済体制学会会報』第37巻、2000年、57頁。
  21. ロシア貯蓄銀行、対外経済銀行を除くモスクワの503銀行の資産総額に占めるハード・カレンシーで保有される不稼動資産の割合は1995年初めで39.5%、1996年初めで20.1%、1997年初めで12.2%となっている(OECD, OECD Economic Surveys - Russian Federation 1997 (Paris, 1997), p. 87.)。
  22. Лубенец А. Кризис рынка межбанковских кредитов и его последствия //ЭКО. 1996. 1. С.65.
  23. 坂口泉「ロシア金融業界の現状」『ロシア東欧貿易調査月報』1995年12月、3頁。
  24. Андреев В. Рынок МБК: жить будет, но не так, как раньше //Экономика и жизнь. 1995. 35. С.4.
  25. 『経済と生活』紙の1994年7月および1995年1月のデータには「他銀行への貸出」の定義が示されていなかった。しかしロシア外国貿易銀行などの年次報告書などから判断すると、これらのデータには、他銀行への預金やコルレス勘定資金が含まれていない可能性が高い。また1997年の『経済と生活』紙のデータでは「他銀行への貸出」は中央銀行を含む他銀行にある自行の資金(他銀行への資金援助も含む)と定義されている。それゆえ『経済と生活』紙の1994年7月および1995年1月のデータと、1997年1月のデータでは、「他銀行への貸出」の定義が異なる可能性が高い。なお、1996年のデータからは他銀行への貸出状況は把握できなかった。また『フィナンシャル・イズベスチヤ』紙のデータにおける「他銀行内にある自行資金」は、他銀行(中央銀行は除く)にある自行のルーブルおよび外貨建ての資金を指す。
  26. この段落の記述はСажин А. и Ржанов А. Межбанковские кредиты в 1994 году: лидирует столица //Экономика и жизнь. 1995. 3. С.6; 1995. 5. С.5.を参照した。
  27. Мосбизнесбанк — Годовой отчет. 1996.
  28. 中央銀行以外に開設されたコルレス勘定内の資金には概して利子が支払われる (Букато В. и Львов Ю.Банки и банковские операции. C.322.)。)。
  29. Сбербанк России — Годовой отчет. 1992-1997. なおロシア貯蓄銀行の1996年および1997年度年次報告書は、ウェブサイトhttp://www.sbrf.ru/よりダウンロードした。
  30. Сажин и Ржанов. Межбанковские кредиты. 1995. 3. С.6
  31. Дементьев Н. 1992-1995 гг.: что происходит в денежно-кредитной сфере России //ЭКО. 1996. 1. С.16.
  32. Российский статистический ежегодник. Москва, 1996. С.420.
  33. この段落は Акимов М. Если б кризиса на рынке МБК не было, его следовало придумать //Коммерсантъ-Daily. 12 октября 1995. С.5.を参照した。
  34. 大野成樹「ロシアにおける銀行の出自別活動の特徴(1992〜98年初め)」『ロシア研究』第29号、 1999年、139頁。